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2015年9月 5日 (土)

「新大気汚染防止法」解説:製造業は更なる対応が必須 環境技術ニーズも増大

 全人代常務委員会は8月29日、改定版大気汚染防止法を公布した。15年ぶりの改定となる新法は2016年1月1日より施行される。新法では、重点地域大気汚染共同対策、重汚染天候対応、大気対策基準と期限内改善計画の章が新たに設けられ、2015年1月1日より施行された改定版環境保護法を踏まえて罰則が大幅に強化され、脱硝・VOC(揮発性有機化合物)対策・水銀除去・POPs(残留性有機汚染物質)・有毒有害大気汚染対策が導入された。地方行政の権限と責任を強化したほか、大気汚染対策に関してより細かなケースについても規定し、この15年間で下位法令や地方法令などで規定された内容を数多く盛り込んでいる。これにより、大気汚染対策は一層進み、製造業にとっては更なる対応が必要となり、大気汚染処理分野の市場は大きく拡大するとみられる。その概要は以下の通り。

■大気汚染対策の監督管理
 新法では、国務院は、各省級政府の大気環境質改善目標や大気汚染防止重点任務の達成状況を審査し、その結果を公表することを新たに規定した。
 大気対策基準と期限内改善計画について一つの章を設け、大気環境質基準や大気汚染排出基準や期限内大気改善計画を策定する場合、関連部門・業界団体・企業・住民などに意見を募るとし、省級環境行政部門はそれらの基準を一般公開するとした。また石炭・バイオマス燃料・塗料などVOCを含む製品やボイラ製品要求などでは大気環境保護要求を盛り込み、ガソリン品質基準は国家大気汚染規制要求に対応し、排気ガス基準に合わせて策定するとした。
 環境影響評価手続きの義務付けは不変であるが、新法ではその文書を公表するとした。大気汚染排出基準の順守、重点大気汚染物排出総量規制の順守は不変であるが、総量規制では現行の重点「2つの規制区」(酸性雨規制区及びSO2規制区)の文言が廃止されて、全国を対象とすることとなった。これに伴い、「2つの規制区」内で定められている汚染排出許可証制度を全国に拡大するとし、排出権取引事業の推進を規定した。
 工業廃ガスを排出する企業、有毒有害大気汚染物を排出する企業、集中熱供給の石炭熱源経営事業者、その他汚染排出許可管理対象の企業は、汚染排出許可証を取得するものとした。
 法令に基づき大気汚染排出口を整えることを新たに規定した。また隠蔽排出、モニタリングデータの改竄・偽造、立入検査逃れの臨時操業停止、大気汚染処理施設の不正常稼働を禁じた。
 企業は、工業廃ガスや有毒有害大気汚染物質の排出状況をモニタリングし、その生データを保管するとした。そのうち重点汚染排出企業(省・市政府がリストを公表)は、自動モニタリング設備を設置・使用し、環境行政部門とネットワーク接続し、その設備の正常稼働を保障し、排出情報を公表するとした。この部分は部門規章等の別の下位法令で規定されていたが、大気汚染防止法の改定で新たに盛り込まれることとなった。
 現行法では大気環境を深刻に汚染する設備の淘汰制度を規定しているが、新法では設備だけでなく生産工程や製品も淘汰対象とした。大気汚染損害評価制度を新たに規定した。汚染排出企業に対する検査手法として、現行法で規定している立入検査だけでなく、自動モニタリング、リモートセンシング、遠赤外線撮影等も規定した。
 法令に違反して大気汚染を排出して深刻な汚染を引き起こした、または引き起こし得る場合、または証拠隠滅のおそれのある場合、環境行政部門は施設・設備・物品の封鎖・差押え等の行政強制措置を行えると新たに規定した。
 現行法では、誰にでもどの組織にも通報の権利があると簡単な規定のみであるが、新法では通報しやすい連絡先の整備、密告含め通報者の権利保護、通報内容の調査と結果公表、通報者への奨励など詳細に規定した。

■大気汚染防止措置
 大気汚染防止措置の章では、①石炭とその他エネルギー、②工業汚染対策、③自動車・船舶等汚染対策、④砂埃汚染対策、⑤農業とその他汚染対策の5節に分けて詳細に規定している。
 石炭とその他エネルギーの節では、一次エネルギーに占める石炭の割合の削減、クリーンな石炭の利用、石炭のクリーン利用、炭層ガス・石炭ボタ・シェールガス・天然ガス・電力・再生可能エネルギー等の奨励を定め、特に高汚染型燃料禁止区域では燃料転換を義務付けた。また石炭火力発電等石炭使用事業者に対し、集塵・脱硫・脱硝・水銀除去等の措置を一体的に導入するよう求めた。新法では脱硝・水銀除去を新たに盛り込んだ。
 工業汚染対策の節では、現行法の脱硫措置導入に加えて、脱硝・VOC対策を盛り込んだ。特にVOC対策では、低毒・低VOC型の有機溶剤の奨励、VOC含有原材料・製品の生産・輸入・販売・使用時の含有量規制順守、VOC廃ガスを排出する生産・サービス活動の密閉空間化や排出削減措置、工業塗装企業の低VOC型塗料の義務付けと記録台帳の保管、石油・化学工業でのVOC漏出防止導入を盛り込んだ。
 自動車・船舶等汚染対策の節では、自動車・船舶に加えて農機具など非道路用移動機械も対象とした。環境規程を順守できない場合、リコールの対象とした。排気ガス基準を守れない場合、修理を義務付け、それでも順守できなければ強制廃棄となるなど、汚染型自動車への圧力を強化した。
 砂埃汚染対策では、建設工事現場での砂埃・粉塵対策を現行法より詳細に規定した。
 農業とその他汚染対策の節では、農業分野のみならず、畜産養殖汚染対策、屋外焼畑禁止、さらには指定の有害有毒大気汚染物質に対する環境リスク管理や定期モニタリング、POPsや焼却施設への対策、悪臭ガス排出対策(現行法にも規定あり)、飲食店・火葬場・自動車修理・ドライクリーニング対策、オゾン層破壊物質の生産・使用・輸出入の総量規制と割当管理(現行法にも規定あり)を規定している。

■重点地域大気汚染共同対策と重汚染天候対応
 重点地域大気汚染共同対策は新たに設けられた章であり、行政区域を越えた広域的な大気環境対策を盛り込んでいる。重汚染天候対応も新たに設けられた章であり、深刻な大気汚染状態が続くことが予測される場合、建設工事の停止、自動車走行規制、工場生産制限、学校屋外活動停止などの緊急対策措置を発動することを盛り込んだ。

■大幅に強化された処罰
 法的責任の章では、処罰金額を大きく引き上げた。例えば大気汚染排出基準を超えた場合、現行法では期限内改善命令と1万~10万元の罰金となっているが、新法では改善命令または生産停止改善と10万~100万元の罰金となっている。新環境保護法で規定された日数罰金も盛り込まれているため、現行法の上限50万元が、理論上は上限がなくなる。このほか、罰則規定が増え、90近くの行為を罰則対象とするなど、より詳細になった。

■今後の注意点
 なお、中国の法律は一般に原則・方向性・方針的な内容が多く、多くの条項で詳細は別途策定する下位法令や標準規格を参照するように書かれており、今後公布される見込みの下位法令や通達、重点汚染排出企業リスト、有毒有害物質リスト、標準規格などの情報をしっかりフォローし、対応していく必要がある。

■企業の対応すべき内容
(当社有料会員企業にのみ提供)

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コメント

マナック㈱ 顧問の日野智章と申します。
「新大気汚染防止法」解説を読み、非常に参考になっています。
本日の問合せは、本「新大気汚染防止法」の法律原本の日本語訳がございましたら入手したいのですが、入手は可能でしょうか。
御無理申し上げますが宜しくお願い致します。

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