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2015年8月13日 (木)

中国内製造業での工場廃棄物管理 ~危険廃棄物では特に厳格管理が必要~

はじめに
 

 ここ1年ほど、江蘇省や遼寧省の日系企業担当者から、「これまで危険廃棄物の処理を委託していた事業者が営業停止処分を受けた。新しい委託先を探さなければならず、困っている」や「危険廃棄物処理料金が値上がりした」という情報が寄せられるようになった。

 製造企業(工場)から出される廃棄物には、一般工業固形廃棄物と危険廃棄物がある。危険廃棄物とは、腐食性、毒性、燃焼性、感染性などを持つ廃棄物のことで、具体的には国家危険廃棄物リストで定められた49カテゴリーの廃棄物(液体も含む)を指すが、これ以外にも危険廃棄物を判定する鑑別基準も定められている。ここで問題になるのは、管理が厳格で処理事業者が限定されている危険廃棄物であるため危険廃棄物処理に重点を置いてまとめる。
 

1.中国の固形廃棄物分類

20150813a_2

工場で行う廃棄物管理

 工場で行う日常的な廃棄物管理については、「①生産計画に基づく工業廃棄物管理計画を策定、当局に提出、②生産活動で発生した工業廃棄物や危険廃棄物を有資格事業者に委託処理(特に危険廃棄物では保有資格を厳しくチェックする必要がある)、③危険廃棄物を市外・省外に移転する場合、マニフェスト管理、④工業廃棄物や危険廃棄物の(委託)処理状況を当局に提出」という一連の流れがある。不法投棄した場合や、危険廃棄物を一般廃棄物に混入して一般廃棄物として処理委託した場合(この場合、判定基準に基づいて危険廃棄物と判定された場合、やはり危険廃棄物として管理する必要がある)はもちろん、有効な許可証のない事業者に処理を委託した場合や移転マニフェスト対応していない場合も、処罰されることになる。
 

 このうち上記の①と④について、過去の一般工業固形廃棄物と危険廃棄物の種類、発生量や処理委託先等、また新たな年度の危険廃棄物管理計画に関する情報を提出するよう義務付けている。この作業プロセスでは一部でIT化が進んでおり、例えば蘇州市では、毎月の一般工業固形廃棄物と危険廃棄物の状況、年間の危険廃棄物管理計画、危険廃棄物移転計画、危険廃棄物移転マニフェスト管理などをオンライン上で提出するよう義務付けており、また遼寧省瀋陽市の例では2014年の一般工業固形廃棄物と危険廃棄物の発生状況と2015年の危険廃棄物管理計画をオンライン上で提出するよう義務付けている。このように最近は紙版の報告書を提出する形式からオンライン上で提出する形式に移り変わっている。ただオンライン提出であろうと、廃棄物管理用の記録簿保管は必須であり、工場管理者としてはその廃棄物管理記録簿を時々チェックする必要がある。

 

処理事業者の選定方法
 

 処理事業者の選定では、インターネット等を活用して自社で探す場合と、現地環境保護局等に相談して探してもらう場合がある。一般工業固形廃棄物では、厳格な資格制度がないため、同じ地域で処理可能な事業者を探すのは比較的容易である。また危険廃棄物では、地方環境保護局が有資格事業者をネット上で公表しており、自社で連絡を取ることもでき、また当局の窓口機関で紹介を受けることもできる。
 

 A市にて工場を経営し、生産活動から一般工業固形廃棄物と危険廃棄物を排出しているとする。一般に、A市の誘致局や所在地開発区管理委員会に処理事業者について照会し、そこで紹介された事業者と処理内容について打ち合わせることになる。また、危険廃棄物処理事業者については、地方当局が名簿を公表しており、ネットからも閲覧できる。その際に、危険廃棄物処理事業者について、危険廃棄物49カテゴリーのうち該当するカテゴリーの許可を持っているか、有効期限は切れていないか、許可証に記載されている備考なども併せて確認する必要がある。
 

 例えば蘇州市(市中市である昆山市、呉江市、太倉市、常熟市、張家港市を含める)の2015420日に公表された最新版危険化学品処理企業リストには、約85社の企業名、許可証番号、住所、対応可能危険化学品カテゴリー、カテゴリー別の認可年間処理量、法定代表者、電話番号、有効期限(一般に3年間)のデータがある。この中には日本資本の蘇州瑞環化工有限公司(日本リファイン株式会社の子会社、対応項目は主に有機溶剤やエーテル系廃棄物)、蘇州同和資源総合利用有限公司(DOWAホールディングス株式会社の子会社、対応項目は主にPCB、貴金属廃液、有機溶剤等)などもある。
 

 ただし実際には、地域ごとに行政当局から処理事業者に関する実質的な指定がある、処理事業者の設立・運営に対する審査・要件が厳しく容易に設立できない、カテゴリーが49もあるため対応できる事業者が市内にあるとは限らない、処理事業者側では年間処理量に関する枠が決まっているなど、選択の幅は狭い。市や省など行政区をまたぐ危険廃棄物の移動は、制度上認められているが、通過する行政区や受け入れ側の環境当局に事前申請して同意を得る必要があるほか、移転マニフェスト手続きが必要であり、特に省級行政区を超える場合、非常に手間と時間がかかるため、実質的に移動が容易ではない。このため、工場内で発生する危険廃棄物の処理委託先がなく、工場敷地内に保管せざるを得ない状況も度々報告されていた。
 

 これに加えて、危険廃棄物処理場に対する監視・取り締まりが厳しくなっており、汚染対策投資の負担に耐え切れずに廃業する処理事業者も出てきている。ここ数年の環境取締りの中で、汚水処理場、ゴミ処理場、危険廃棄物処理場などの環境インフラで汚染対策が徹底されておらず、本来汚染を処理して環境を保全するはずの環境インフラが新たな汚染発生源になっている事実が明るみになっている。危険廃棄物処理事業者についても、許可証にないカテゴリーの危険廃棄物受け入れ、許可証有効期限が切れているのに経営を続けた、移転マニフェストを実行していない、焼却廃ガスが基準値を超過したなどの事例が絶えない。このため、国と地方はこれら環境インフラを重点監視対象に指定しており、汚染対策の不十分な事業者に罰金・閉鎖・操業停止改善などの罰則を科しており、処理事業者にとっては多額の汚染対策投資がのしかかっている。
 

 環境当局は、危険廃棄物処理事業者に対する監視・監督・指導を強化しているが、これは環境リスクを下げる意味で役立つものと思われるが、工場側からするとそれでも不安を払拭しきれない。中国の危険廃棄物処理事業者は、一般に見学受け入れに消極的である。このため、適正処理をしているかどうかの確認は日本より難しい。ただ、顧客になり得る企業に対して見学を受け入れる事業者もわずかに存在する。日系を含む外資系の処理事業者は見学受け入れに比較的寛容であり、また人脈ができていれば、現地の誘致局や環境保護局、開発区管理委員会などの機関の経由で見学を依頼することは可能であろう。

 

処理料金水準

 

 処理料金については、一般工業固形廃棄物の処理料金は一般に規定はなく、市場やコストによって決まるが、およそ1トン当たり1500元~3000元が多いようである。
 

 危険廃棄物の処理料金は一般に市政府物価局が定めるが、工業危険廃棄物(医療廃棄物除く)の固化埋立処分では1トン当たり3000元、焼却処理では同2700元、物理化学的処理では同1500元、特殊危険廃棄物処分では同8000元が目安となる。地方によってはこの料金は運搬費用を含める場合と含めない場合がある。
 

 例えば江蘇省蘇州市では、2013101日より、固化・埋立処分では1kgあたり2.00元(そのうち劇毒類は70.00元)、焼却では同2.8元、物理化学的処理では同1.3元、特殊危険廃棄物処分は同8.00元で10%以内の調整可能となっている(いずれも運搬費用は別途)。江蘇省無錫市では、2013719日の通達で、固化埋立処分では1kgあたり3.00元(調整可能幅を上限2割増、下限なしとする)、焼却では同2.80元(調整可能幅を上限3割増、下限なしとする)、物理化学的処理では同1.50元(調整可能幅を上限3割増、下限なしとする)、劇毒品処分は同90元以内としている。江蘇省徐州市では、20141010日の通達で、固化埋立処分では1kgあたり2.2元(調整可能幅を上限2割増、下限なしとする)、焼却では同2.80元(調整可能幅を上限3割増、下限なしとする)、物理化学的処理では同1.80元(調整可能幅を上限3割増、下限なしとする)、劇毒品処分は同70元以内としている。安徽省合肥市では、20141230日の通達で、1kgあたり1.80元~4.00元(運搬費用を含む)の項目別料金表を公表している。

 

江蘇省危険廃棄物処理業者の状況

江蘇省は日系の製造工場が非常に多いだけでなく、危険廃棄物処理事業者も非常に多い。201412月に環境保護省が公布した『2014年全国大中都市固形廃棄物環境汚染防止年報』によると、江蘇省は危険廃棄物経営許可証の発行数が最も多い。環境規制の厳格化も進めており、同省環境保護庁が20138月に公布した『危険廃棄物経営事業者汚染排出自社モニタリング業務規範化に関する通達』では、20141月より危険廃棄物事業者に対して自社モニタリング方案の策定・実行・情報公開を義務付け、これに違反した場合は許可証の更新申請を受理しないとした。特に、危険廃棄物の焼却・埋立に対する監視を強化しており、2014年上半期で焼却事業者5社に操業停止・改善命令を下した。

2で、同省の危険廃棄物処理事業者数と処理能力の推移を示した。2014年前半まで、事業者数・処理能力ともに安定しておらず、特に5月と7月に大幅に低下したが、年後半以降に安定してきた。ただし、ここでいう処理事業者には、回収・利用、前処理、埋立、焼却等の全てを含む。次に焼却事業者に絞ったものを示す。
 

2 江蘇省危険廃棄物処理業者数および処理能力合計の推移

20150813b_2出典:江蘇省環境保護庁ウェブサイトより筆者作成

  図3で、焼却処理事業者数と焼却処理能力の推移を示した。許可証の有効期限満了後も更新できず失効する事業者、新規参入あるいは処理能力拡張等のため、毎月増減を繰り返している。現在25社前後で推移しており、危険廃棄物処理事業者のうち、焼却能力を持つ事業者は全体の約10%に過ぎない。

3 江蘇省の危険廃棄物焼却処理
業者数および焼却処理能力の推移

20150813c_2出典:江蘇省環境保護庁ウェブサイトより筆者作成
 

まとめ

 

 危険廃棄物管理制度はより厳格に施行されるようになりつつある。行政による政策・制度の枠組みのみならず、情報公開による市民監視を通した、社会からの監視圧力も日増しに強まっており、今後廃棄物市場も一層の規範化が進むとみられる。こうした中、危険廃棄物処理事業者も厳格な対応が求められるようになり、一部に廃業も見られるようになった。在中国製造業にとっては、危険廃棄物処理先を探すのが容易でなくなり、困難に直面している。今後は当局ウェブサイトで正規の処理事業者を探し、処理費用の相場を踏まえつつ交渉する必要がある。また廃棄物管理のIT化も進んでおり、発生量管理・委託処理・将来計画等の情報もオンラインで提出し、また発生地点の監視カメラ導入・当局へのネットワーク化を求める地方も出てきており、これらへの対応も求められる。一方で、技術改善要求もおのずと高まっており、海外の先進的取組や技術の導入が加速している。日中関係の改善が進む中、危険廃棄物処理技術を有する日系企業にとっては好機ともいえる。

 

関連情報

 

 中国廃棄物管理対応のより詳細な情報は以下のセミナーを参考にして下さい。 

「中国の廃棄物リスク事例と実務のポイントを知るセミナー」
日時:2015929日(火) 14:0016:00
場所:東京都千代田区九段北
http://www.amita-oshiete.jp/seminar/entry/002256.php

http://www.amita-net.co.jp/news/2015/08/post-146.html
 

参考文献・URL

江蘇省蘇州市危険廃棄物処理企業(20154月発表)

http://www.szhbj.gov.cn/hbj/gf.htm

江蘇省蘇州市危険廃棄物処理料金基準(20139月)

http://www.szhshb.com/Shownews.asp?id=50

江蘇省無錫市危険廃棄物処理料金基準(20137月)

http://wjj.chinawuxi.gov.cn/web101/zt/sqsf/7037033.shtml

江蘇省徐州市危険廃棄物処理料金基準(201410月)

http://xxgk.xz.gov.cn/xxgkdesc/xxgk_desc.jsp?manuscriptid=f97b852120d84c518cefd40d7f713cb7&zt=

安徽省合肥市危険廃棄物処理料金基準(201412月)

http://www.hfpi.gov.cn/n7216006/n9984511/n9984639/n9985122/37248568.html

環境保護省2014年全国大中都市固形廃棄物環境汚染防止年報』20151月)

http://www.zhb.gov.cn/zhxx/hjyw/201501/t20150105_293794.htm

大野木昇司、中根哲也2015)「中国における工場側から見た廃棄物処理対応」,『季刊環境技術会誌』(一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会)20157月号(通算160号)

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