2018年12月10日 (月)

「景気対策で大気環境規制を緩和」推測報道の間違い 全国ではむしろ規制強化

 11月以降、「米中貿易摩擦のため、景気対策として大気環境規制を緩和している」という推測報道が相次いでいる。しかし全国範囲ではむしろ大気環境規制は強化されている。環境政策の流れを見誤って自社の環境対策を緩めてしまえば、容赦なく環境処罰されるため、中国進出日系企業は環境対応の継続的強化が不可欠である。

 

1.最近の中国大気環境規制の緩和報道

 11月以降、この種の報道が増えてきた。その主なものは次の通り。

 

11月>

中国で大気汚染が深刻化 米中貿易摩擦が影響か

https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000140760.html

米中貿易摩擦、北京の空に悪影響? 「黄色警報」発令も

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181115-00000011-asahi-int

北京で今週に深刻なスモッグ、「環境汚染規制緩和の影響」との指摘も

http://japanese.donga.com/List/3/03/27/1540050/1

北京、今冬最悪の大気汚染=米中摩擦も要因?

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018111400917&g=int

 

12月>

中国、大気汚染の対策緩める

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181204-00000154-kyodonews-soci

中国、大気汚染の対策緩める 景気優先で早くも悪化

https://news.infoseek.co.jp/article/kyodo_kd-newspack-2018120401002621/

中国、「花より団子」環境規制を緩和して景気優先「大気汚染続く」

http://hisayoshi-katsumata-worldview.com/archives/14092853.html

中国、工場一斉休業見直し 環境保護より景気優先 規制緩和、大気汚染深刻に

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO38474010T01C18A2FF2000/

中国の広範囲で冬の大気汚染、79都市に警報=新華社

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181203-00000014-reut-cn

 

2.中国大気環境規制の緩和推測の根拠

 

 上記報道からすると、中国大気環境規制の緩和を推測する主な根拠は次の通り。

 

①京津冀秋冬季特別規制の削減目標の低下

②「一刀両断」的環境規制の厳禁

③その結果として11月の大気汚染は去年より悪化

 

3.それぞれの根拠の詳細と問題点

 

3-1.京津冀秋冬季特別規制の削減目標の低下

 秋冬季の臨時大気汚染規制は、秋冬季大気汚染総合対策攻略行動方案と呼ばれ、大気汚染の最もひどい京津冀(北京-天津-河北)周辺地区の2017年は「京津冀及び周辺地域20172018年秋冬季大気汚染総合対策攻略行動方案」、2018年は「京津冀及び周辺地域20182019年秋冬季大気汚染総合対策攻略行動方案」が公布されている。2017年版ではPM2.5濃度削減目標は15%、重度大気汚染日数削減目標は15%であり、2018年は共に3%に減少している。

 改善目標が15%→3%に減少した主な理由には、①限界コストの問題、②2017年は大気汚染防止行動計画の最終年であり、異様なラストスパートがあったが、2018年は青空保護戦行動計画の開始年であり、各地方政府のモチベーションが違う、③昨年は気象条件に恵まれたが、2018年は例年通りの気象条件であり、昨年比で言えば気象条件が悪化し、昨年レベルを維持するのも困難――というのが挙げられる。

 

3-2.「一刀両断」的環境規制の厳禁

 「一刀両断」(原文では「一刀切」)的環境規制とは、重度大気汚染警報が出されたとき、中央の環境査察チームが入ったときなどに、業種や環境対策の程度など無関係に、工場に生産停止を命ずる、ピークシフト生産(平日昼間の生産を禁止)の対象にする、建設工事の停止を命ずるというものである。これは国の方針に基づくものではない。

 これは環境対策へのインセンティブや経済的法則を無視し、世界次元でサプライチェーンを寸断し、工場の生産計画をムチャクチャにする、不合理で不適切な規制であった。現場からも不満の声が相次ぎ、日本の経済界からも中国国務院に対して善処を要望するなど、世界的な問題になっていた。

 2018年前半の時点で、中国政府はこのような「一刀両断」的環境規制を厳禁とし、もしまだ実施しているのを発見すれば地方行政を処罰すると通達を出した。

 このような「一刀両断」的環境規制の厳禁は、不適切なやり方を改め、ポイントを突いた効果的な規制に転換するものであり、「緩和」とは別であり、ましてや米中貿易摩擦とも無関係である。米中貿易摩擦があろうとなかろうと実施したものと思われる。

 

3-3.規制緩和の結果として11月の大気汚染は去年より悪化

 11月の大気汚染は昨年より悪化したのは事実であり、北京PM2.5濃度で見れば54%も悪化している。ただし、①大気環境改善のトレンド、②気象条件――を見る必要がある。

 大気環境改善のトレンドで見れば、11月の北京PM2.5濃度で見れば、ここ数年で今年は昨年に次いで2番目に低い。

201511月北京PM2.5濃度118µg/㎥ 

201611月北京PM2.5濃度100µg/㎥ 前年比15.3%減

201711月北京PM2.5濃度46µg/㎥ 前年比54%減

201811月北京PM2.5濃度71µg/㎥ 前年比54%増

 

 大気汚染における気象条件の寄与率は23割と言われている。昨年の大気環境改善は、昨年の気象条件が異常に良かったためであり、むしろ例外ととらえるのがよいであろう。

 

4.むしろ大気環境規制は強化される

 一刀両断規制を禁じたため、去年から大気汚染総合対策攻略行動を実施している京津冀周辺地域だけは緩和に感じると思われる。自社への生産停止指示も、サプライヤが生産停止して納入できなくなる事態も少なくなっている。

 ただし地域別には、京津冀周辺地域だけでなく、全国で大気汚染総合対策攻略行動を導入した。国家重点地域である長江デルタ(上海、江蘇、浙江、安徽)、汾渭平原(陝西、山西の一部)はもちろん、それ以外の広東省、四川省などでも幅広く実施することになった。これにより、昨年の京津冀レベルほどではないが、今年は京津冀以外の地域で大気汚染規制がかなり厳しくなったと感じられるはずである。

 これを感覚的にイメージ化したものが下図である。

20181210154400_2



 今までは製造業では生産工程やボイラに対する大気汚染規制がメインであったが、今年からは(社員)食堂油煙排出、非道路移動機械(エアコンプレッサ、フォークリフト等)排気ガス、非重点企業へのVOC規制など、よりきめ細かい大気環境規制を導入することになる。

 中国の環境規制への本気度は留まるところを知らず、例えば今年7月には天津市人民政府が、市内に約300ある工業団地・開発区・情報集積エリアのうち、環境対策で約1/3を取り潰すという通達を出した。

http://www.tj.xinhuanet.com/news/2018-07/07/c_1123091539.htm

 2018年には土壌汚染防止法を制定し、固形廃棄物環境汚染防止法を改定し、地方大気汚染防止条例を一斉に改定し、2020年までには国家大気・廃水総合排出基準を改定するなど、環境規制はますます強化・最適化される見込みである。地方でも行政機構改革が波及し、権限が強化された生態環境庁(局)が次々と発足している。

 したがって、環境規制の趨勢を正しくとらえて正しく対処し、「景気対策で大気環境規制を緩めているから自社の環境対策も緩めてよい」という間違った考えにとらわれず、環境対策を継続的に強化し、環境リスク対策を強化していくことが重要である。

以上

2018年10月24日 (水)

この秋冬の大気環境規制の大幅強化 長江デルタも重点対象に

 2017年は大気汚染防止行動計画(大気十条)の最終年ということもあり、5年間の目標を達成するため、北京周辺28都市(華北地区大気汚染移動経路都市226都市、京津冀周辺地区)を最重点地域として、強硬な大気環境規制を実行した。中でも、大気汚染警報の発出期間や、中央環境査察及び大気汚染総合対策強化査察の査察団の常駐期間などに、地域の工場を一律で生産停止したり、建設工事を数ヶ月~半年停止させたりするなどの強硬策は、大気改善目標に貢献した一方で、地域の生産活動に大きな支障となった。環境対策をしっかり行っても生産停止の対象になるなど、産業界からは不合理であるとの指摘が多かった。

 

 2018年の大気汚染対策では、新たな青空保護戦勝利3年行動計画のもと、2017年と同様に「強化査察」と「秋冬攻略行動」の2段階で規制を強化している。

 

                                             
 

 
 

2017

 
 

2018

 
 

大本の計画

 
 

20139

 
 

大気汚染防止行動計画

 

(最終年ラストスパート)

 
 

20186

 
 

青空保護戦3年行動計画

 

(開始年)

 
 

年度計画

 
 

20172

 
 

京津冀周辺地区2017年大気汚染防止事業方案

 
 

 
 

(地方版のみ)

 
 

強化査察

 
 

20173

 
 

2017-2018年京津冀周辺地区大気汚染防止強化査察方案

 
 

20186

 
 

2018-2019年青空保護戦重点地区強化査察方案

 
 

攻略行動

 
 

20178

 
 

京津冀周辺地区2017-2018年秋冬大気汚染防止総合対策攻略行動方案(16査察)

 
 

20189

 
 

京津冀周辺地区2018-

 

2019年秋冬大気汚染防止総合対策攻略行動方案

 

 

 ただし、昨年とは次の点で大きく異なっている。

(1)一律の生産停止や工事停止等の「一刀両断」的措置を厳禁

(2)環境対策をしっかり行っている企業や環境負荷の小さい企業には環境規制優遇

(3)地理的範囲や分野は拡大し、きめ細かく規制する

 

 このうち、一般に環境対策をしっかり行っている日系企業にとっては、(1)(2)はありがたい方針である。大気汚染も改善傾向にあり、大気汚染警報の日数は減ると見込まれるため、昨年ほどの生産停止や工事停止はないものと思われる。一部のメディアでは、米中貿易戦争の影響もあり、経済成長確保のため、大気汚染規制を緩和するという報道もある。ただし同じ対策でも大気汚染改善の余地は次第に小さくなるため、緩和とは言えず、さらに(3)のため必ずしも甘くはない。

 

 「強化査察」では昨年、京津冀周辺地区に対して毎日大気汚染規制の立入検査を実施し、その結果を公表していたが、今年は京津冀周辺地区のみならず、汾渭平原(陝西省や山西省西部等)や長江デルタまで含まれる。なお珠江デルタは、大気環境改善が進んだため、最重点地域から除外された。

・第一フェーズ(2018611日~85):京津冀周辺「2+26」都市

・第二フェーズ(2018820日~1111):京津冀周辺「2+26」都市と汾渭平原11

・第三フェーズ(20181112日~2019428):京津冀周辺「2+26」都市、汾渭平原11市と長江デルタ31

 

 日系製造業が多く進出する長江デルタが、ついに1112日より大気「強化査察」を毎日受けることになる。その主な検査項目は次の通り。

・「散乱汚」企業整備状況:環境・品質・安全・エネ消費の面から基準順守を求める、「先停後治」、復活阻止

・工業企業環境問題対策状況:環境設備、VOC対策、無組織排出対策、大気特別排出規制値の適用、工業炉整備状況

・クリーン暖房、石炭代替、石炭ボイラ改善、苦情の多い環境問題

・輸送方式の転換、露天鉱山対策、砂埃対策、くずわら焼却規制

・ピークシフト生産、重度大気汚染緊急対応措置

 

 さらに大気総合対策「攻略行動」方案について、京津冀周辺地区版は927日に公布され、長江デルタ版は10月上旬にパブコメ版が公表された。長江デルタ版は101日より実施開始なのに、10月上旬になってようやくパブコメ版が公表されると時期的には合わないが、非常に重要な文書であるため、以下に長いが重要部分を記載する。

 

       
 

主要目標2018年大気質改善目標を全面達成。秋冬季期間(2018101日~2019331日)、長江デルタPM2.5平均濃度を前年同期比約5%低下させ、重度大気汚染日数を同比約5%減らす。

 
 

対象地域:上海市。江蘇省の南京市、無錫市、徐州市、常州市、蘇州市、南通市、連雲港市、淮安市、塩城市、揚州市、鎮江市、泰州市、宿遷市。浙江省の杭州市、寧波市、温州市、嘉興市、湖州市、紹興市、金華市、衢州市、舟山市、台州市、麗水市。安徽省の合肥市、馬鞍山市、蕪湖市、黄山市、池州市、六安市、宣城市、安慶市、銅陵市、淮南市、滁州市、阜陽市、亳州市、淮北市、蚌埠市、宿州市、計41の地級以上都市(つまり上海市、江蘇省、浙江省、安徽省の全域)

 
 

基本方針:産業構造・エネルギー構造・運輸構造・用地構造の調整・最適化を全面的に推進し、「分散・非規範・汚染」型企業の総合整備を深く実施し、化学工業・鉄鋼・建材等の過剰生産能力を削減し、石炭燃焼とバイオマスボイラの淘汰・整備を加速し、工業企業環境施設のグレードアップ改造を継続し、船舶・港湾汚染防止を強化し、VOC・工業炉・ディーゼル貨物車特定行動を実施し、重点時間帯地域共同対策を強化し、重大活動主催地及び周辺都市、主要輸送経路都市の大気汚染防止協力を強化し、重度大気汚染に効果的に対応し、秋冬季大気汚染総合対策攻略行動を深く推進する。

 
 

 重度汚染企業の移転改造事業を実施する。市街地重度汚染企業の移転改造、閉鎖撤退を加速し、201812月末前に、上海市は鉄鋼・化学工業・非鉄金属・鋳造・建材・製薬等重度汚染企業60社を含む産業構造調整事業を1000件終える。江蘇省は化学工業等産業の企業67社、浙江省は化学工業・鋳造・建材等産業の企業124社、安徽省は非鉄金属・鋳造・建材等産業の企業53社の移転・改造をそれぞれ終える。移転、生産能力の買収・置換等を行う全ての鉄鋼精錬事業は、原則として沿海地域でのみ計画・実施できる。

 

 化学工業団地と化学工業企業の総合整備を強化する。長江主流と主な支流の川沿いから1km以内で化学工業団地と化学工業企業の新設を厳禁とする。化学工業団地の新設を禁じ、既存の化学工業団地に対し、分類別整理統合、改造・グレードアップ、生産削減・淘汰を行う。201812月末前に、上海市は化学工業団地整備行動特定方案を打ち出し、金山地区環境総合改善行動方案と事業リストを策定する。江蘇省は化学工業企業の「閉鎖・移転・グレードアップ・再編特定行動」を実施し、化学工業企業整備事業を1893件終える。浙江省は化学工業整備事業77件と化学工業団地5ヵ所の総合整備を完成し、安徽省は化学工業団地10ヵ所の総合整備を完成する。

 

 VOC総合対策特定行動を実施する。重点産業VOC排出総量規制を実施し、産業別にVOC排出総量・削減量を定め、年度目標である10%以上の年度排出削減目標を達成する。

 

 上海市は、化学工業・包装印刷・家具・完成車製造・自動車部品製造等の産業でのVOC対策グレードアップ改造を重点的に推進し、300社以上の対策を終える。江蘇省は、石油化学・化学工業・ゴム・工業塗装・包装印刷・飲食油煙・自動車修理産業等でのVOC総合対策を終え、5000社以上の対策を終える。浙江省は、靴製造・紡績染色・木板加工等のVOC総合対策を重点に進め、工業悪臭対策、汚水処理場脱臭対策を継続し、1500社以上で対策を終える。安徽省は、石油化学・化学工業・プラスチック・工業塗装・包装印刷・飲食産業等のVOC総合対策を重点的に進め、554社で対策を終える。

 

 低VOC含有型有機溶剤製品を大々的に普及させる。高VOC含有量の有機溶剤型の塗料・インキ・接着剤等を生産・利用する事業の新設・改造・拡張を禁ずる。工業・建築・自動車修理等での低(無)VOC含有型の原材料・補助材料と製品の使用を積極的に推進する。201911日から、自動車用塗料、木製品用塗料、工程機械塗料、工業防腐塗料の使用可能状態でのVOC含有量の規制値を、それぞれ580g/L600 g/L550 g/L550 g/Lとする。自動車修理塗料は全て、使用可能状態でのVOC含有量を450g/L、そのうち下塗り塗料と上塗り面塗料は420g/Lとする。

 

 VOC無組織排出規制を強化する。工業企業VOC無組織排出の徹底調査を行い、これには工程プロセス無組織排出、動的・固定密封点の漏洩、保存・積替え時の散逸排出、廃水・廃液・残渣の散逸排出等を含む。201810月末前に、各地で重点産業VOC無組織排出改造の全範囲リストを作成し、VOC排出無組織排出対策を加速する。

 

 工程プロセスの無組織排出規制を強化する。VOC型資材は密封保存缶または密封容器に保管し、密封管または密封容器で輸送する。遠心分離、ろ過ユニット操作には密封式遠心分離機、圧縮ろ過器等を利用し、乾燥ユニットには密封乾燥設備を利用し、設備排出口から出るVOCは収集処理し、反応排ガス、蒸留装置非凝縮廃ガス等の工程廃ガス、及び工程容器の換気、送風、真空排気等では収集処理を行う。

 

 LDAR(漏洩検知・修理)制度を全面的に推進する。ポンプ、コンプレッサ、バルブ、フランジ、その他連結部品等の動的・固定密封点の漏洩を測定し、台帳を作成する。台帳には測定時間、測定機器の数値、修理時間、修理後の測定機器の数値等を記録する。

 

 保存・積替え時の散逸排出規制を強化する。実蒸気圧が76.6kPa以上の揮発性有機液体の保存には低圧タンクや加圧タンクを用い、実蒸気圧が5.2kPa以上76.6kPa未満での保存タンクにはフローティングタンクやVOC収集処理装置のある固定頭部タンクを用いる。このうち、内部浮屋根式タンクには液浸透式密封、機械式靴型密封等の高密封効率の方式を採用し、外部浮屋根式タンクには2重密封を採用する。有機液体の積替えには、上部浸出式または底部設置式を採用し、設置施設には廃ガス収集処理システムまたは気相平衡システムを設置する。

 

 廃水・廃液・残渣システムの散逸排出対策を強化する。VOCを含む廃水輸送システムでは、安全性を確保した上で、空気と隔離する措置を講じる。VOCを含む廃水処理施設は蓋をつけて密閉し、排ガスはVOC処理施設に送り、廃水・廃液・残渣を処理・移転・保管する容器は密封する。

 

 汚染処理施設のグレードアップ改造を推進する。201810月末前に、各地は工業企業VOC汚染処理施設に対し汚染処理効果の取締り検査を実施する。安定的に基準順守できない簡易処理工程に対しては、企業に期限内改造を促す。企業は多種技術を用いてVOC対策効率を高めるよう奨励する。低温プラズマ技術、光触媒技術は、低濃度の有機廃ガスや悪臭ガスの処理にのみ適用する。活性炭吸着技術を採用する場合、脱着工程を設置するか、定期的に活性炭を交換するものとする。

 

 統一的な環境管理政策を実施する。地域で統一したVOC規制技術規範体系を構築するよう模索し、これにはVOC排出算定方法、石油化学・化学工業・塗装・印刷・製薬・電子・染色など重点産業に特化したVOC排出基準、低VOC塗料製品基準、塗料・インキ等グリーン製品基準、使用過程自動車・船舶・非道路移動用機械の排出管理基準を含む。

 

 各地で適したやり方で重汚染型都市工業企業のピークシフト生産を推進する。2017年秋冬季PM2.5濃度が70μg/㎥以上であった都市は、鉄鋼・建材・コークス・鋳造・非鉄金属・化学工業等の高排出産業に対し、201811月~20192月に区分別ピークシフト生産を実施する。月別大気環境質予測結果に基づき、ピークシフト生産の期間を適切に短縮・延長する。

 

 「一刀両断的措置」を厳しく禁じる。各種汚染物が安定的に排出基準を順守していない、汚染排出許可管理要求を満たしていない、期限内に20182019年秋冬季大気汚染総合対策改造任務を終えていない場合、ピークシフト生産措置を全面的に導入する。『産業構造調整指導リスト』の制限類に該当する場合、生産制限の割合を高めるか、生産停止を行う。産業内で汚染排出パフォーマンスレベルが同業他社より顕著に良好である環境模範企業は、リソースの保障を前提に、生産制限を免除できる。

 

 各省市は、重点産業区分別ピークシフト生産のパフォーマンス評価指導意見を作成する。各都市は、ピークシフト生産実施方案を策定し、企業の生産ライン、プロセス、施設まで落とし込み、具体的安全生産措置を定める。

 

 多量資材のピークシフト運輸を実施する。各地はピークシフト運輸方案を策定し、重度大気汚染緊急対応プランに盛り込み、オレンジ警報以上の重度大気汚染警報期間と重点時間帯には、原則として大型貨物車の工場への出入りを禁ずる。重点企業・事業者は、車両出入り口に監視カメラを設置し、監視記録を3ヶ月以上保存し、秋冬季期間は全ディーゼル貨物車の出入りの状況を記録し、2019430日まで保管する。

 

 

 日系企業の今後の対応としては、大気「強化査察」方案や、京津冀周辺版と長江デルタ版の大気総合対策「攻略行動」方案を早急に確認し、自社の実態を把握してこれらの方案の自社適合状況を検査し、具体的対応策を検討、実行していく必要がある。

 

2018年6月21日 (木)

自社やサプライヤー向け環境順法監査、環境規制収集解説サービスはなぜ必要か

 当社では中国内日系工場やそのサプライヤー向けに環境順法監査を行っている。日本式の環境管理を導入している、ISO14001を導入している、EHSなど環境部署を設置しているなどで、自社の環境管理は大丈夫だと安心している日系企業も多いが、これらは環境順法を担保するものではなく、実際にISO14001を取得している日系企業が処罰される事例も多い。

 現場ローカルスタッフの言うことを鵜呑みにすることにリスクがあり、自社のチームや第三者の外部専門家を入れて現場監査を行って、初めて問題点が発覚することも多い。ここで重要なのは環境法規制や環境管理知識を全面的に熟知した専門家が現場を見るということである。事前にその工場の現状を把握し、その工場に適用される環境法令・政策・通達等をじっくり下調べし、環境アセス報告書や排出許可証等を確認し、初めて現場入りできる。この事前プロセスなしの環境順法監査はあまり意味がない。

 この環境順法監査は、サプライヤーに対しても実施している。


 中国内日系工場向けに環境順法監査の中で、問題点の多い分野の一つが現地環境規制情報収集の不徹底である。

 環境対策をしっかりしている日系企業でも、環境規制情報の収集には漏れがある。一般に約13割の漏れがある。特に情報のアップデートが行われていないケースが多く、しかも上位法令・政策の改定を受けて2017年頃から地方法規の制定・改定・廃止が激増している。それも「△件の地方法規改定に関する通達」というまとめた通達が急増しており、通達名称だけでは環境法規かどうかは不明である(一部の例として下表参照)。

 
 

<国務院>一部行政法規の改定・廃止に関する決定

 

http://www.gov.cn/zhengce/content/2018-04/04/content_5279815.htm  

 

北京市:7件の地方法規改定(3月)

 

http://zhengwu.beijing.gov.cn/sy/tzgg/t1514510.htm

 

天津市:19件の地方規章の改定・廃止(3月)

 

http://www.chinalaw.gov.cn/art/2018/3/22/art_15_207683.html

 

天津市:5件の地方規章の改定・廃止(5月)

 

http://tj.xinhuanet.com/news/2018-05/04/c_1122782698.htm

 

上海市:4件の地方法令の一部改定に関する決定(1月)

 

http://www.sepb.gov.cn/fa/cms/shhj/shhj2013/shhj2019/2018/01/97882.htm  

 

江蘇省:16件の地方法規の改定(3月)

 

http://www.jsrd.gov.cn/zyfb/sjfg/201804/t20180402_493546.shtml

 

江蘇省:省政府規章の改定・廃止(5月)

 

http://www.jiangsu.gov.cn/art/2018/5/15/art_46143_7638781.html

 

山東省:14件の地方法規14件の改定(1月)

 

http://www.sdrd.gov.cn/articles/ch00098/201801/207440ee-28ef-416b-aaa6-79ce7b8e1a62.shtml

 

青島市:27件の政府規章改(3月)

 

http://www.chinalaw.gov.cn/art/2018/5/3/art_15_208086.html

 

重慶市:16件の地方法規改定パブコメ版(2月)

 

http://www.cq.gov.cn/public-consult-webapp/upc/cnlt/find.action?id=1090

 

 環境法規情報は、中国の法律制度や、複雑な環境政策や環境制度の枠組み・全体像に熟知していないと、個別情報の意義や位置付けが分かりにくい。

 環境管理は、法令・政策等の文系知識と、化学物質や汚染処理プロセスといった理工系知識の両方が必要であり、法律/弁護士事務所ではあまり対応できない。法律/弁護士事務所が強みを発揮するのは主に処罰時の当局との交渉や司法裁判であり、通常の環境管理ではあまり対応できない。また適用される法規やその条文、適用されない法規やその条文をどうやって区別するのか、経験をかなり積まないと対応できない。

 重要部分の日本語訳は必要であるが、環境の知識や専門性がない人が訳すと意味がゆがむこともある。

 

 上記の問題点について、当社は専門的な環境順法監査やカスタマイズ型環境規制情報収集・解説サービス、個別企業向け中国環境管理セミナーを行っている。

 

日中環境協力支援センター(www.jcesc.com

2018年1月15日 (月)

2017年12月から2018年1月における中国環境規制の大きな進展

1.年末年始にかけての中国環境規制の進展の概要

 

201712月から20181月にかけて、中国環境規制で大きな進展があった。一般に年末年始頃に公布・公表される政策制度や法令通達が多い傾向にある。

 

例えば201712月後半に公布された環境分野の国家標準・業界標準は44件もある。標準ではないが、注目度の高い法令制度には、環境保護税法実施条例、全国GHG(温室効果ガス)排出権取引市場構築方案、生態環境損害賠償制度改革方案、職業病防止法(改定)などがある。

 

2.環境保護税の注意点

 

環境保護税については、当ブログで解説したので概要を省略するが、すでに201811日より施行され、初回(1月~3)の納税申告・支払が41日~15日となっている。

 

下位法令として、環境保護税法実施条例、各省級政府の地方税額方案、「汚染物排出量計算の汚染排出係数・物質収支方法の公布に関する公告」が出されている。今後、さらに環境保護税税務申告書などが整備されるものと思われる。

 

環境保護税法の注意点

・前身の汚染排出費制度は廃止となるが、201712月末までの汚染排出費は支払わなければならない。

VOC単独の汚染排出費制度も廃止となり、環境保護税制度でも当面引き継がれない(いずれ導入される見込み)。

・地方の環境保護税税額に要注意、主に低中高の3ランクからなる。①低ランク:遼寧、吉林、浙江、福建、安徽等12省、②中ランク:山東、広東、湖北、重慶、四川等12省、③高ランク:北京、天津、河北、上海、江蘇等6

・企業側がエビデンスを付けて排出量と自社で計算した環境保護税額を申告・納税する(排出費と比べて手間が増える)

・特に留意すべき点としては排出量の確定方法である。環境保護省は、オンラインモニタリングを導入していない企業の係数法・マテバラ法について、約550ページにわたる計算方法文書を公表している。

・対象期間終了から申告納税期間終了までわずか半月しかないため、前もって準備を進める。

 

なお前身の汚染排出費制度の時から、人によっては罰金であると説明しているが、汚染排出費も環境保護税も罰金ではない。何らかの法令や基準に違反したから支払わなければならないわけではない。

 

3.温室効果ガス排出権取引市場構築で留意すべきは地方実証制度

 

国家発展改革委員会は20171218日、「全国GHG(温室効果ガス)排出権取引市場構築方案(発電産業)」を公布した。遅れに遅れて、また対象産業を大幅に絞り込んで(8産業→3産業→1産業)、ようやく2017年末前の全国GHG排出権取引制度立上げが実現し、「2017年中の立上げ」という絶対指令を何とか守った。それでも1700社、約30億トンの排出量が対象となり、EU取引市場規模を上回る。

 

日本の報道では、日系企業にも影響があること等が指摘されている。日系企業への影響で言えば、全国GHG排出権取引市場構築は直ちに影響するわけではない。GHG年間排出量2.6万トン(エネルギー消費石炭換算1万トン相当)以上の一定規模以上の発電企業(自家発電含む)のみが対象であり、中国の発電企業に投資・納品している一部日系企業等には影響が出るであろうが、中国内日系製造業に幅広い影響があるとは言えない。対象業種が拡大すれば、当然日系製造業も対象になり得るが、まだ当面時間がかかる見込みである(1産業でも膨大な準備時間がかかった)

 

中国GHG排出権取引で日系製造業が留意すべき点は、むしろ地方GHG排出権取引実証事業の拡大である。これまで北京、天津、上海、広東、深センなど7地域で地方GHG排出権取引実証事業を推進し、対象企業リストに日系企業が70社以上入っていたが、この7地域を拡大する見込みである。福建省ではすでに約300社が対象となり、江蘇省、浙江省、四川省でも準備が進められている。既存7地域でも対象企業リストを毎年更新・追加している。日系製造業がこれら地方版制度に新たに加わる可能性は高いと言える。

 

CO2対策では、省エネ量取引制度、エネルギー使用権取引制度、炭素税(予定)など類似制度が乱立しており、今後どのように統合するのか注意が必要である。国家発展改革委系の研究者は、制度乱立に関する私の質問に対し、取引制度による環境・GHG対策は制度が複雑になり過ぎて困難であるとして、炭素税のようなシンプルな制度にすべきとの個人的見解を示している。

 

4.北京の大気汚染防止目標達成と全国大気汚染防止行動計画第2フェーズ

 

2013年公布の大気汚染防止行動計画では、最終年である2017年の大気改善目標を定めており、中でも北京のPM2.5年間平均濃度を60μg/m3に下げるという厳しい目標を定めた。2016年は73μg/m3であり、それまでの削減率から類推すると2017年の最終目標達成はかなり厳しいと思われた。

 

しかし結論から言えば、この目標は達成し(58μg/m3)、北京とその周辺では青空が大幅に増えた。2013年よりPM2.5年間平均濃度は35.6%減少し、大気汚染警報で工場操業制限や交通制限が発令されるのも減った。北京に住む者として、また高校時代からの環境主義者として、北京の大気環境改善は喜ばしいことである。ただし手放しで喜べるわけでもない。第一に、大気汚染状況は気象条件に左右されることが多く、2017年後半、特に秋冬にかけては気圧配置など気象条件に比較的恵まれており、運が良かったとも言える。第二に、特に2017年の北京周辺地区(いわゆる226都市)の大気環境規制は極めて厳しく、現場の実情を無視した強硬策などで住民生活や生産活動にも悪影響を及ぼしていた。環境改善は、健康で文化的な最低限度の生活と健全な経済活動を保障した前提でないと、持続的で健全とは言えない。その意味では改善の余地は大きいと言える。

 

大気汚染防止行動計画は201712月末で終了し、これに付随する形で公布された大気汚染取締りや秋冬季臨時大気汚染規制方案(工事停止、輪番生産停止、VOC・粉塵の厳格規制等含む)3月で一旦終了する。目下の注目点は、2018年以降も大気汚染防止行動計画第2フェーズを策定・実行するのかという点であろう。結論から言えば、大気汚染防止行動計画第2フェーズを実行する可能性が高い。正式決定はまだであるが、政府系のシンクタンク・専門家からは第2フェーズが提言されている。環境保護省は大気汚染防止行動計画(1フェーズ)を評価総括した上で上位部門(党中央や国務院)に指示を仰ぐと慎重な表現に留めている。また地方版の大気汚染防止行動計画も2018年以降のものが続々と検討されている(北京、河北、四川等ですでに動きあり)

 

5.中央環境査察は今後どうなるのか

 

2016年~2017年、中央環境査察が全国を一巡し、その破壊力は凄まじかった(詳細は以前のブログ記事参照)。最終結果として、この査察により、受理した住民からの陳情・告発案件は計13.5万件余、立件処罰は2.9万社、罰金額は14.3億元、立件調査は1518件、拘留者は1527人であり、党政府の指導者や幹部18448人を行政指導し、責任追及者数は18199人となった。

 

さて今後の焦点は、この中央環境査察は今後どうなるのかということであろう。国家環境査察弁公室は今後の方針の見通しを次の通り挙げている。

 

・第一次環境査察の状況を整理し、経験を取りまとめ、不足点を洗い出し、査察メカニズムを整備し、今後の査察に向け準備を行う。

・環境査察の法規制度構築を検討推進し、徐々に環境保護査察を法制化・規範化の道に乗せる。

2018年に第一次環境査察状況の「振り返り」を行うよう検討し、汚染防止攻略戦の重点任務について、重点地域の大気汚染、重点都市の悪臭水域汚染、住民の生活・生産活動に影響する深刻な環境問題に対象を絞り、機動的でポイントを絞った特定査察を実施する。

・地方が省級環境査察体系を構築するよう積極的に指導し、国による省の監督、省による市・県の監督という中央と省の2段階査察体制メカニズムを実現し、査察の連動的効果を発揮させる。

 

つまり、正式決定はまだであるが、2018年から中央環境査察の二巡目を行うと予想される。また法制化(現在の規則は非公開)、省級地方版環境査察の導入も進めるということで、手綱を緩めるどころかさらに厳格にする方針であると読み取れる。

 

一方で、環境査察による弊害も数多く表面化し、また不条理な規制への改善の動きもみられる。例えば査察チームの来訪後、その地域全体の工場を生産停止させる、環境対策をいくらしっかりやっても周辺住民のわずかな苦情(臭い、騒音、湯気等)で生産停止や移転を命じられる、大気汚染警報時に一刀両断的に生産停止を命じられるなどである。現場役人も、環境管理を理解しておらず、不条理な規制・取締りを行うことがあるが、産業界からの苦情もあり、改善の動きもみられ、例えば行政・住民・企業の三者会談実施、大気汚染警報時の区分別生産規制導入などが進む。また江蘇省太湖流域水汚染防止条例の改定作業中であるが、一刀両断的に製造業を規制するのではなく、汚染の少ない戦略的新興産業などに例外規定を設けるのを検討している。

 

6.今後の環境政策を検討する上で重要な政策文書

 

最近、生態環境損害賠償制度、河川長・湖長、生態補償、環境保護税改革など大きな環境制度が次々に繰り出されている。一見バラバラで不規則に出されているように見えるが、実は重要な環境政策方針の下に進められている改革なのである。特に重要な環境政策方針とは、①党中央の生態文明建設関連文書と第19回全国代表大会報告、②国務院の第13次五ヵ年省エネ排出削減総合事業方案と個別環境行動計画、③全人代の第13次五ヵ年計画綱要、④中央経済工作会議、⑤省庁別の環境第13次五ヵ年計画である。これら政策文書から、今後の中国環境規制の方向性を体系的に読み解くことができる。詳細は、当社の中国環境規制実務対応セミナー(22回中上級編)にて説明する予定である。

http://www.jcesc.com/seminar21-22.html#22

 

7.環境重点企業リストについて

 

上海市環境保護局は20171229日付で「上海市2018年重点汚染排出事業者リスト」を公布した(公表日は15日)が、その意義が分からないとの声もある。このような重点環境企業リストを見る際に重要なのは、上位法令が何かということである。環境規制実務で重要なのは、断片的理解ではなく体系的理解である(断片的解説しかしない人が大半)。環境分野の重点企業リストは、いくつも存在する。代表的なものは、重点汚染排出事業者リスト、環境重点監視企業リスト、重点エネ利用事業者リストの3つであるが、他にもGHG排出規制企業リスト、大気汚染警報時生産停止・制限企業リスト、クリーナープロダクション強制審査企業リスト、土壌環境重点監督管理企業リストなど非常に多い。それぞれ上位法令で重点企業リストを規定しており、上位法が分からないと、当該企業は何をすればよいのかわからないのである。これについても、当社環境セミナー、コンサル・顧問業務の中で解説している。

 

「上海市2018年重点汚染排出事業者リスト」

http://www.sohu.com/a/215620822_808781

 

(宣伝)弊社では中国環境規制に関して、顧問業務、法令調査、コンサル、情報サービス、環境順法状況の現場診断監査、社内セミナー講師派遣、弊社主催セミナー開催などにより、日系企業をサポートさせて頂いております。お気軽にご相談下さい。

2017年10月16日 (月)

中国環境保護税制度とその実務対応法を概説

中国環境保護税制度

 

中国では、企業向けの新たな環境規制の導入、既存の環境規制の改革が続いている。周知の通り、大気汚染規制は大幅に強化され、今後も続いていくのはもちろん、次の制度改革が進んでいる。

・建設事業環境管理制度(環境アセス、環境検収等)

・土壌汚染防止法(2018年頃制定)

・環境保護税法(201811日施行)

・改正水汚染防止法(201811日施行)

・新たな汚染排出許可証制度

・グリーン製品認証制度

・グリーン製造業制度(グリーンプロダクト、グリーンファクトリー、グリーン産業団地、グリーンサプライチェーン制度)

・企業環境リスク管理制度

2020年までの環境保護基準の整備(大気総合、廃水総合、悪臭等基準を改定)

2020年までの危険化学品基準の整備

 

本稿ではこのうちほとんどの製造業が対象となり、日系企業にとっても影響の大きい環境保護税について解説する。環境保護税制度はかなり昔から検討されていたが、習近平政権の体制強化に伴い、環境諸制度の改革が大きく進んだ。環境保護税制度もその一つである。

 

中国環境保護税制度の概要

 

ごく簡単にまとめれば、40年近くの歴史のある汚染排出費制度を環境保護税に転換し、税務機関と環境当局が共同管理するものである。

 

 
 

・納税者;中国領域及び管轄の他海域で、環境に課税対象の汚染物を環境に直接排出する企業。現行の汚染排出費と同じ。

 

・税額;現行の汚染排出費とほぼ同じ(2014年通達)。省級地方政府は、額を引き上げ可能(国務院に届出)。

 

・課税対象と課税範囲;課税対象は、大気汚染物、水汚染物、固形廃棄物、騒音の4種、具体的な税目は『税目税額表』を適用。大気汚染物、水汚染物の課税範囲は、それぞれの排出口の汚染物の種類別に、汚染当量数の大きい順に並べ、上位3種とする(排水のみ重金属を含む第一区分項目の上位5種も加える)。省級地方政府は課税対象汚染物の種類数を増やしてもよい(国務院に届出)  

 

・税制優遇;納税者が、課税対象の大気汚染物と水汚染物を排出する際、排出濃度基準を50%下回る場合、徴収額を半減でき、排出濃度基準を30%下回る場合、徴収額を75%に減免できる。

 

・徴収管理;「企業が申告、税務機関が徴収、環境部門が協力、情報を共有」の徴収管理方法に基づき、①納税者は税務機関に納税申告を行い、申告内容の正確性と合法性に責任を持つ、②税務機関が、納税者の申告データが明らかに事実と異なることや脱税等の行為を発見した場合、環境行政部門に納税者の汚染排出状況の査定を申請、③環境行政部門と税務機関は関連情報の共有メカニズムを構築する。月毎に計算し、四半期ごとに支払う

 

 

留意点について

n 汚染排出費から環境保護税転換での基本金額の変化

 大気・水の項目と汚染当量値は変更なし

 ただし排水について第1類を別途追加

 課税係数は大気1.2(0.6)、水1.4(0.7)に倍増(2014年通達でSO2NOxCODA-Nのみ大気1.2元、水1.4元に引き上げる指示あり)

 廃棄物の不適合保管は変更なし

 基準超過騒音は区分が大きくなり、実質若干の引き下げに

n 優遇/懲罰方式

 大気・水で、濃度基準値50%以下で半減、同70%以下で75%に減免(新規定であるが、50%以下のケースは2014年通達で指示あり)

 「大気・水で排出基準超過時に倍額」は廃止

 「大気・水で排出総量枠超過時に倍額」(2014年通達のみ)は廃止

 「淘汰類産業に対して倍額」(2014年通達のみ)は廃止

 上記廃止項目は直接処罰方式に転換か

n 省級地方政府の引上げ権限

 省級地方政府は税額表の範囲内で大気・水の課税係数を引き上げてよい

 大気は1.2元~12元、水は1.4元~14

 現行でも北京、天津などで一部項目を約10倍に引き上げている

 

環境保護税法の全文(当社訳)については、このブログページよりダウンロードできる。ダウンロードできない場合、当社まで連絡下さい。

「kankyozei.pdf」をダウンロード

なお、2017年末まで施行される汚染排出費制度は、いまだに「環境罰金である」と間違った説明をされる方が多いが、これは汚染排出課徴金であり、排出削減のための経済的インセンティブ+環境補助金財源であり、汚染排出濃度と排出総量枠を順守しても支払わなければならない環境利用料金であるため、法令違反(行政処罰)や違法(刑事処罰)とは全く異なる。

 

中国環境保護税制度の解説

 

環境保護税については、すでに以下の解説記事があるが、実務的な解説は少ない。

 

 
 

環境保護税法 201811日スタートまで3か月を切りました

 

https://www.attax.co.jp/cbc/appointed02/post-5603/

 

「中国環境保護税法実施条例(意見募集稿)」

 

http://www.bk.mufg.jp/report/inschiweek/417072601.pdf

 

環境保護税法

 

http://tgii.center/info/wp-content/uploads/2017/05/6ee09d1e3d1d88b8ca334e2f45714fd0.pdf

 

汚染排出費を環境保護税へ

 

https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/world/info/cndb/express/pdf/R419-0462-XF-0105.pdf

 

全人代常務委員会が「中華人民共和国環境保護税法」を可決

 

https://home.kpmg.com/cn/en/home/insights/2017/01/china-tax-alert-05-j.html

 

中国環境保護税法の施行と日本企業への影響

 

http://www.jri.co.jp/thinktank/sohatsu/mailmagazine_html/170110/index.html

 

中国 環境保護税の導入が決定 201811日からスタート

 

https://www.attax.co.jp/cbc/news/post-3990/

 

中国:「環境保護税」草案を改正、地方の追加課税に上限

 

http://news.finance.yahoo.co.jp/detail/20161221-00000048-scnf-world.vip

 

 

環境保護法の法令の体制としては、20171016日の時点では次の通り。

①環境保護法→②環境保護税法→③環境保護税法実施条例→④地方通達

 

このうち環境保護法では環境保護税を導入しますよという内容にとどまるので、実質的には②、③、④が重要となる。

 

環境保護税:企業のどんな負担が増えるか?

□環境保護税法の施行は企業に影響 企業負担への影響

 第一に、企業名義での負担の変化は、環境保護税に対する地方の具体的税率水準で決まる。

 税・費用改革の負担不変要求に基づき、環境保護税の税率下限と汚染排出費の最低徴収基準は一致しているため、名義上の負担の変化は、地方がその権限内で引上げた具体的税率水準で決まる。

 実際に、一部の地域は20156月末までに、汚染排出費徴収基準を引き上げた。例えば北京市(最低基準の89倍)、天津市(同57倍)、上海市(同36.5倍)、江蘇省(同34倍)、河北省(同25倍)、山東省(同2.55倍)、湖北省(同12倍)等である。

 第二に、環境保護税の徴収・管理強化の面から、企業の実質負担が増える。

 徴収管理後の実質負担の面では、改革後、徴収管理がより強化され、過去、企業が汚染排出費の徴収管理でありえた費用交渉や未納問題が、税務機関の徴収管理で解決できる。

 また、環境行政部門による企業汚染排出監督管理の厳格化に伴い、データ改ざんが徐々に減り、企業の申告した汚染排出量等のデータが、より真実で信頼性が高くなる。このため、汚染排出費の徴収率と比べて、環境保護税の徴収率は高くなり、これはある程度企業の実質負担を増やす。

□企業の経営・管理面への影響

 第一に、全体から言えば、環境保護税による企業経営への影響は小さい。現行の企業税負担構成から見ると、汚染排出費は、税・費用負担の主要構成部分ではない。

 国家統計局の調査データによると、2015年の大規模工業企業の税金は、付加価値税、企業所得税、営業税及び付加・管理費用等からなり、営業収入の5.36%を占める。一方、2015年の汚染排出費収入は173億元で、大規模工業企業の主業務収入の0.02%しかないという。

 上記のデータから、他の徴収費用を考えない場合、汚染排出費が大規模工業企業税・費用収入に占める割合は0.29%しかなく、一部の汚染排出量の大きい工業企業の状況を考慮しても、汚染排出費が企業の納める税・費用総額に占める割合は1%未満であるため、環境保護税の導入は、全体としては企業経営に大きな影響を及ぼさない。

 環境保護税の徴収開始後の企業汚染排出モニタリングの強化を考慮すると、企業は、汚染物自動モニタリング設備等施設への投資拡大、汚染処理施設の運行コスト増等を含めて、汚染排出基準順守のため、汚染対策を強化して汚染対策費用負担を増やすことになる。

 環境保護税では、納税者の汚染自動モニタリング設備用投資に資金・政策的支援を与え、負担の軽減を図ると打ち出した。

 第二に、環境保護税は、企業が環境管理・税務管理を強化するよう求めた。企業は、課税汚染物の排出種類・量・濃度・課税額等を自ら申告し、申告内容の正確さに責任を負う。税務機関は、企業の納税申告データ資料を比較し、環境行政部門に再審査を申請することもできる。

 汚染排出費の徴収管理と比べると、企業は、税収徴収管理法等の規定手続きに厳格に順守して納税を申告し、より明確な法的責任を負うものとする。そのため、企業は、環境・税務の管理を強化し、納税申告の正確性・真実性を確保し、管理不充分による税務リスクを削減する必要がある。

<環保創業邦より>

http://huanbao.bjx.com.cn/news/20170603/828972.shtml

 

 

環境保護税法実施条例で意見募集 排出濃度など各項目の定義を明確化

 財務省、税務総局、環境保護省は626日、『環境保護税法』の施行を支えるため、『環境保護税法実施条例』(パブコメ版)を共同で起草・公布し、意見募集を開始した。同条例は42条からなり、環境保護税納税者、課税対象を明確にし、課税対象汚染物排出量の4種類の計算方法の具体的状況を細分に規定し、環境保護税法に定める免税・減税の条件を具体的にし、環境保護税法の規定を踏まえ、環境保護税徴収管理事項について規定した。

 同条例第2条は税法を踏まえ、環境保護税の納税者を細分化し、企業・事業者のほか、環境保護税を支払わねばならない自営業工商者やその他組織等の「その他生産経営者」を明確にした。

 税法の規定では、徴収対象は大気汚染物・水汚染物・固形廃棄物・騒音の4種類である。同条例は、徴収対象について解釈・詳細化し、①大気汚染物とは環境中に排出した大気環境質に影響する物質、②水汚染物とは環境中に排出した水環境質に影響する物質、③固形廃棄物とは工業生産活動で発生した固形廃棄物、医療・予防・保健等の活動で発生した医療廃棄物、及び省・自治区・直轄市政府が定めたその他固形廃棄物、④騒音とは工業生産活動で発生した周辺生活環境に影響を及ぼす音を指す。

 同税法は、工業汚水集中処理等を免税しないと規定しているため、同条例では税法の免税対象の「都市汚水集中処理場所」の範囲を「一般住民に公共生活汚水(汚泥)集中処理サービスを提供し、かつ公共財政が運営サービス費を負担する、或いは運営資金を手配する汚水(汚泥)集中処理場・施設」と定め、「工業団地・開発区・工業クラスタ区及びその他特定地域内の企業・公共事業者、その他生産経営者に汚水処理サービスを提供する施設・場所、及び企業・公共事業者やその他生産経営者が自社で建設・使用する汚水処理施設・場所」は免税の対象外である。

 課税対象である大気汚染物と水汚染物の「濃度値」について、同条例では、当月自動モニタリングした課税対象大気汚染物の1時間平均値を更に平均した数値、又は課税対象水汚染物の日平均値を更に平均した数値、及び当月モニタリング機関が毎回測定したモニタリングの課税対象大気汚染物・水汚染物の濃度値である。

 納税者が2つ以上の排出口から大気汚染物・水汚染物を排出する場合、排出口ごとに課税対象汚染物の環境保護税を計算する。環境保護税の徴収を減額する場合、各排出口の課税対象汚染物ごとに計算するものとする。

 固形廃棄物の場合、その排出の特徴を踏まえ、課税対象物排出量の計算・確認に便利なように、同条例では「固形廃棄物の排出量=当期固形廃棄物の発生量-当期固形廃棄物の総合利用量-当期固形廃棄物の保管量-当期固形廃棄物の処分処理量」の式で計算する規定した。

 汚染物モニタリング管理規定に違反した、及び汚染物を違法排出した納税者に対し、同条例は、課税対象汚染物排出量を同税法第10条第3項の汚染排出係数、物質収支(マテリアルバランス)計算方法、汚染発生量で計算すると明確にした。汚染排出係数と物質収支計算方法は、国務院環境行政部門が策定・公布する予定である。

 同税法では、実際にモニタリングまたは物質収支計算できない畜産養殖産業、小型企業、第三次産業等の小型汚染排出者に対し、付属文書『畜産養殖産業、小型企業、第三次産業等水汚染物当量値』で計算する。同条例の特別説明において、税法で規定していないその他の家畜の種類に対し、課税対象汚染物排出量の計算方法は省級環境行政部門が定めるとした。

 行政部門間の情報伝送のため、同条例では、国務院税務・環境行政部門が全国統一の環境保護税税務関連情報共有プラットフォームを構築し、税務関連情報共有プラットフォーム技術基準を策定し、データ収集・保管・伝送・検索・使用の規範を明確にすると説明している。

 地方税務機関、環境行政部門は、共有プラットフォームを通じて税務関連情報を共有できる。環境行政部門は、環境監督管理中に取得した、汚染排出事業者の名称・統一社会信用コード・汚染排出口・排出汚染種類等の基本情報、排出汚染物のモニタリング結果、違法排出行為の処理処罰情報等の情報を、プラットフォームにより税務機関に伝達するものとする。税務機関は、プラットフォームを通し、納税者が申告した固形廃棄物発生量・総合利用量・保管量・処分量及び関連証明書類、納税者が申告した納税予定額・減免額・国庫入金税額・滞納税額等、納税者の納税申告データ資料の異常等のリスク容疑情報、納税者税務関連違法行為処理情報等を伝達するものとする。

 納税者が申告した汚染物モニタリングデータが環境行政部門の伝達したデータと異なる場合、同条例は、①納税者が自動モニタリングデータにより課税対象汚染物排出量を計算する場合、税務機関は環境行政部門が伝達したデータに基づいて納税額を計算する、②納税者がモニタリング機関の発行したモニタリングデータに基づき課税対象汚染物排出量を計算する場合、税務機関は納税者の申告データと環境行政部門の伝達したデータと比較し数値の高い方を納税者の納税額として確定する。

 税法第17条によると、課税対象汚染物排出地は、課税対象大気汚染物、課税対象水汚染物の排出口の所在地、固形廃棄物発生地、工業騒音発生地を指す。納税者の課税対象大気汚染物・水汚染物排出口が生産経営地とは異なる省級行政地域にある場合、生産経営地の税務機関が管轄する。

 環境行政部門と税務機関の業務を如何に連携するかについて、同パブコメ版によると、①税務機関は環境行政部門が伝達した汚染排出事業者情報に基づき納税者識別を行い、②各級税務機関・環境行政部門は納税者への指導研修を強化し、納税コンサルサービスを行う、③環境行政部門は、納税者が申告した課税対象汚染物排出情報及び適用する汚染排出係数・物質収支計算方法が規範を満たさないことを発見した場合、税務機関に通知して処理する、④税務機関は法により環境保護税の税務検査を実施し、環境行政部門はこれに協力する――とした。

・財政省、国家税務総局、環境保護省『環境保護税法実施条例(パブコメ版)』

http://www.chinatax.gov.cn/n810214/n810606/c2682982/content.html

<界面ニュース、中国環境報より>

http://huanbao.bjx.com.cn/news/20170627/833367.shtml

http://www.mep.gov.cn/xxgk/hjyw/201706/t20170628_416808.shtml

 

中国環境保護税制度の対応実務

 

特に実務的に重要になるのが次の問題である。

 

VOC単独課税があるのか?

 VOC対策の一環として、2015年にVOC汚染排出費の単独課金実証事業が始まった。実際には石油化学と印刷包装の2業種(北京、上海、山東では対象業種を追加)で、2016年~2017年頃から各地で始まった。

 元の汚染排出費制度では、各汚染項目の汚染当量数(実排出量を項目別汚染当量値で割った数値)が上位3項目に入らないと課金されず、大半はSO2NOx、粉塵で上位3項目を占め、トルエンやキシレンといったVOC各項目が上位3項目に入ることは少なく、VOC排出抑制効果が低かった。そこでトルエンやキシレンなどVOCについては、上位3項目に入らなくても単独で課金することにした。

 VOC汚染排出費の単独課金実証制度は、現行の汚染排出費制度をベースに上乗せした制度となっており、環境保護税制度になった後、こちらも環境保護税制度をベースに上乗せした制度になるのかどうか、現在は未定である。

 オフィシャルな解説によると、「条件が整ってくればVOCも対象に入れる」となっている。それではすぐには対応不能ということで、201811日からの環境保護税導入には間に合わず、当面は汚染排出費上乗せ制度方式で間に合わせる可能性があると思われる。もしこれなら環境保護税は税務機関に申告、VOC単独課金上乗せ部分は地方環境保護局に申告するという複雑な構図になる。いずれにせよ今後の通達待ちとなる。

 

・具体的な計算方法

 排出した汚染物の種類・量を、汚染当量に基づいて計算。汚染当量当たり徴収基準は大気1.2元。

 各排出口につき、汚染当量の多い順に上位3位まで。

 ある汚染物の汚染当量数:汚染当量数=(排出量(kg))÷(汚染当量値)

 環境保護税の計算:排ガス課税係数1.2元×上位3項の汚染当量数の和

 

計算例:企業Aのある排出口(1ヶ月)

                                                       
 

 

 
 

排出量(kg)

 
 

汚染当量値

 
 

汚染当量数

 
 

SO2

 
 

50

 
 

0.95

 
 

52.6

 
 

NOx

 
 

60

 
 

0.95

 
 

63.2

 
 

粉塵

 
 

90

 
 

2.18

 
 

41.3

 
 

CO

 
 

10

 
 

16.7

 
 

0.6

 
 

ベンゼン

 
 

2

 
 

0.05

 
 

40

 
 

トルエン

 
 

2

 
 

0.18

 
 

11.1

 

 

 この場合、汚染当量数の多い順の3項目にはSO2NOx、粉塵となる。したがって、次の通り計算する。

 

環境保護税額1.2×(52.663.241.3)188.52

 

 なお、次の点にも留意する必要がある。

①排出口ごとに計算し、最終的に合算する

②大気の場合、無組織排出(漏洩排出)も別途計算する。

③排水の場合、第1類汚染(上位5項目)とその他(上位3項目)で分けて計算する。

④排水の場合、下流に工業廃水処理場がある場合、環境保護税は課されず、汚水処理費を支払う。

⑤地方によっては、この課税係数が引き上がる。特に項目によって課税係数が異なる地方もある点に注意。

 

・地方の課税額はどうなるのか?

 現行の汚染排出費も、2014年通達を受けて各地で引き上げられた(全項目ではなくSO2NOxCODA-Nのみというケースが多い)。特に天津では約9倍、北京では約15倍となった。これは、環境設備を導入するより汚染排出費を払う方が安上がりであるという経済的インセンティブが働かない上、物価上昇により汚染排出費の負担感がさらに軽くなったことが背景にある。また元々環境保護税への転換時に引き上げることを想定していたが、時間がかかってしまうため、環境保護省等が通達形式で各地方環境保護局に引上げを指示していた。

 環境保護税の課税レベルは、2014年通達後の汚染排出費の料金レベルとほぼ同等であるが、一部地方では汚染排出費の料金を引き上げているため、地方の環境保護税も引き上げられると予想される。一部の環境保護税額引き上げ状況は下表の通り。

 

                                                                                               
 

地方

 
 

大気課税係数

 
 

排水課税係数

 
 

課税項目数

 
 

現行との比較

 
 

決定状況

 
 

全国

 
 

1.212

 
 

1.414

 
 

・大気排水3

 

1類排水5

 
 

最低係数不変

 

1類排水追加

 
 

決定済み

 
 

福建

 
 

1.2

 
 

重金属、CODA-N1.5元、その他1.4

 
 

全国と同じ

 
 

ほぼ不変

 
 

決定済み

 
 

浙江

 
 

重金属1.8元、その他1.2

 
 

重金属1.8元、その他1.4

 
 

全国と同じ

 
 

大気重金属のみ引上げ

 
 

提案中

 
 

江蘇

 
 

4.8

 
 

5.6

 
 

全国と同じ

 
 

 

 
 

提案中

 
 

南京

 
 

8.4

 
 

8.4

 
 

全国と同じ

 
 

 

 
 

提案中

 
 

広東

 
 

1.8

 
 

2.8

 
 

全国と同じ

 
 

引上げ

 
 

提案中

 
 

山東

 
 

SO2NOx6.0元、その他1.2

 
 

1.4

 
 

全国と同じ

 
 

不変

 
 

提案中

 

 

中国環境保護税制度 工場側の留意事項まとめ

 

 現行の地方汚染排出費制度がほぼそのまま移行される(排水第一類を除く)と予想されるが、詳細は地方当局の通達や制度を注視する必要あり

 企業側が排出量データの証明責任を負うため、発生源モニタリングを強化する必要あり

 工場内では環境部、財務部のどちらが担当になるか、あるいは共同担当になるか、各社で議論が必要

 納付率の高い日系企業にとっては、金額負担が増えるケースは少なく(排水第一類を除く)、むしろ優遇適用で負担が減ることもある

 税の横展開(別の未納税と併せて取り立てる)に留意

 サプライヤの納税状況、税負担増による価格向上に留意

 2015年通達の排気中のVOCへの単独課金は別規定で維持されるかは未定

 四半期ごとの支払いとなる

 

2017年10月 3日 (火)

この秋冬、中国で強烈な環境規制が導入 生産停止が続出

もともと103日、4日に都内で中国環境規制セミナーを開催して、中国環境規制の最新情勢をお伝えする予定であったが、外国人就労許可制度の変更に伴う更新手続きに想定以上に時間がかかり、元のセミナーの日程までの帰国が不可能になった。このためセミナーは20182月下旬に延期とさせて頂いた。

(セミナー案内ページ)

http://www.jcesc.com/seminar21-22.html

そこで、このセミナーで取り上げる予定であった、この秋冬の強烈な中国環境規制について、本ブログで簡単にまとめたい。

この秋冬の強烈な中国環境規制には、大きく2つの流れがある。第一に環境取締りの強化、第二に『大気汚染防止行動計画』最終年のラストスパートである。

 

第一の流れ:異次元の環境取締りの強化

 

環境取締りの強化は今までにも行われており、例えば201511日施行の環境保護法では、日数罰金制度、閉鎖差押え、生産停止改善、行政拘留、公益訴訟が盛り込まれた。更には「約談」(行政指導)、環境モニタリング/発生源モニタリングの強化、最近中国でよく導入されている採点評価手法を導入した危険廃棄物取締り制度など枚挙にいとまがない。これら環境処罰件数はうなぎ上りに増えている。振り返れば2005年頃、当時の国家環境保護総局の潘岳副局長が主導した環境アセス取締りの嵐、区域・流域認可制限(原文;限批)制度、グリーンGDP等も印象深かった。

 

しかし2016年後半から本格化した「中央環境査察」の破壊力は、かつて例がないほどすさまじい。なにせ中国共産党中央委員会(いわゆる党中央)と国務院が主導するため、地方環境当局にとっては逃げ場がない。今までは中央や地方の環境行政が取締りを主導していたが、この「中央環境査察」では中国権力構造の最上位が主導しており、その破壊力は異次元レベルである。

 

例えば、今までは工場で何らかの環境法令違反が判明したとしても、地元の環境保護局は、地方経済への貢献、税収、失業率、行政側の失態追及回避等を考え、見て見ぬふりをしていた、あるいは接待や袖の下を受けて見て見ぬふりをしていた(罰則軽減も含む)わけであるが、中央査察ではそれが一切通用しないどころか、過去の問題点を追及されて処罰された地方環境役人が続出し、その数は1万人を超えた。

 

中国内日系企業でも、2016年後半から地方当局の態度が強硬に杓子定規的に変わったという事例が多いが、それはこのような背景に起因している。

 

またこの「中央環境査察」も予兆はあった。2012年第18回党大会で「五位一体」(経済建設、政治建設、文化建設、社会建設、生態文明建設)が打ち出され、20157月に党中央全面改革深化指導小組が「環境保護査察方案(試行)」を可決、翌年から「中央環境査察」がスタートした。

 

中央環境査察チームは1期ごとに78(直轄市等含む)に派遣され、第4期が20178月に始まりこれで全国を一巡することになる。この第4期では、吉林、浙江、山東、海南、四川、チベット、青海、新疆が対象となる。一般からの環境苦情を受け付け、さらに査察チーム自ら工場への立入検査も行っている。

 

中央環境査察では、取締りや処罰をやりっ放しにせず、省別に膨大な改善ノルマリストを作成・公開し、改善状況も逐一チェックしている。

 

この中央環境査察は一過性の措置ではなく、「環境保護査察方案(試行)」により党内で制度化されている(非公開)。つまり今後ずっと続くのであり、今年や来年で終わるものではなく、企業側としても今後恒常的に対応する必要がある。さらにこの環境査察は、中央だけでなく、省レベルでも広がっており、細かい地方にまで浸透しつつある。

 

それでも「上に政策あれば下に対策あり」で査察逃れも若干存在する。例えば査察チームの進駐後、一部地方政府は地域の工場を全て臨時操業停止にして問題が発覚しないようにする例もある。ただ徐々に包囲網が厳しくきめ細かくなっており、いずれ査察逃れもほとんどなくなると思われる。

 

その成果として、すさまじい数の環境対策不十分な企業を生産停止に追い込み(立入検査企業の約2/3で法令違反が判明)、それまで国際社会から批判されてきた中国の生産能力過剰問題が瞬く間に解決したばかりか、逆に世界市場での原材料製品の供給不足や価格高騰を引き起こすまでになった。価格高騰は、需給バランス要因のほか、企業の環境対策投資が進んだことも要因である。今の中国では、「環境対策のためには、GDP影響、失業率、税収など関係ない」という本気の環境規制が進んでいるといえる。

 

第二の流れ:『大気汚染防止行動計画』最終年のラストスパート

 

中国では20131月より新たな大気環境モニタリング体制がスタートし、北京等でPM2.5等を測定・公表するとその数値が極めて高く、大気汚染騒動が勃発、発足間もない習近平政権は20139月『大気汚染防止行動計画』を策定した。大気汚染対策は一定の成果を挙げ、各地で大気汚染は改善した。しかし京津冀(北京-天津-河北)において、それまでのペースでは『大気汚染防止行動計画』で示された最終年である2017年の改善目標の達成が難しいとされ、強硬な大気汚染対策を導入した。具体的には20167月『京津冀大気汚染防止強化措置(20162017年)』を公布、さらに20178月『京津冀及び周辺地区2017年~2018年秋冬季大気汚染総合対策強硬行動方案』(及びその下位政策6)を公布した。

 

この大気環境対策はあまりにも強硬なため、この秋から来春にかけて、京津冀及び周辺地区、特に大気汚染経路都市「226」ではほとんど製造業の工場稼働や工事ができないほどである。

 

※大気汚染経路都市「226」は、北京、天津、河北省の石家荘、唐山、廊坊、保定、滄州、衡水、邢台、邯鄲、山西省の太原、陽泉、長治、晋城、山東省の済南、淄博、済寧、徳州、聊城、濱州、菏澤、河南省の鄭州、開封、安陽、鶴壁、新郷、焦作、濮陽の計28都市を指す。

 

この『強硬行動方案』の製造業に係る具体的措置は次の通り。

・「散乱汚」(分散・非規範・汚染)型企業/クラスタの総合取締り

・バラ石炭汚染総合対策、石炭ボイラ対策

 →石炭を使用している工場は取締り対象

・工業企業の無組織排出管理(粉塵、砂埃対策)

 →頻繁な水撒き、土の部分のコンクリート化、緑化等

・工事現場の砂埃対策

 →工事現場を巨大プレハブで囲み監視カメラを設置

 ()北京の地下鉄工事現場では巨大プレハブで完全包囲

 →それ以外では、北京は4ヵ月、天津は6ヶ月工事禁止

・重点産業向け排出許可証の発行

・移動汚染源厳格規制(トラック、工事機械含む)

 →物流網が寸断

 →エアコンプレッサ、フォークリフト等も要注意

・工業企業ピークシフト生産/輸送

 →夜や休日に生産/輸送を行う

・重点分野VOC対策

 →有機溶剤対策、LDAR、工場建屋・設備の密閉化、原料代替

 →社内食堂の廃ガス対策も要注意

・排ガス自動監視の全網羅

 →発生源モニタリング、工場境界部大気濃度モニタリング、工業団地大気濃度モニタリング

・重度大気汚染警報対応

 →大気汚染警報が出れば生産停止/制限やトラック走行停止

 →大気汚染警報時の排出量を削減

                                                 
 

警報

 
 

SO2

 
 

NOx

 
 

PM

 
 

VOC

 
 

青色

 
 

 

 
 

 

 
 

5%

 
 

5%

 
 

黄色

 
 

10%

 
 

20%

 
 

30%

 
 

10%

 
 

橙色

 
 

10%

 
 

20%

 
 

30%

 
 

15%

 
 

赤色

 
 

10%

 
 

20%

 
 

30%

 
 

20%

 

・中央環境特定査察(前述の通り)

 

河北省廊坊市の事例

 

筆者は915日、ジェトロ北京と廊坊市日本人会との共催による中国環境規制セミナーにて講師を務めた。その際に、強硬な大気環境規制の実状を視察した。その中で印象に残った内容は次の通り。

 

①市内路線バスは秋~冬に完全無料化

 →マイカー利用を控えるための措置

②霧吹き車が頻繁に大通りを行き来

③廊坊市外トラックを進入禁止

④毎日立入検査

⑤工場内に監視カメラとモニタリング機器を設置

⑥工場建屋の密閉(換気扇含む)と印刷設備の密閉の二重密閉指導あり

VOC処理装置の設置指示

⑧工事の禁止

 

印象としては、わずかな砂埃も許さない、わずかなVOC排出も許さないという感じである。

 

日系企業への影響 大きな経営リスクに

 

このような厳しい環境規制により、現地日系企業にも次のような影響が出ている。

 

①環境罰金(罰金だけで解決するわけではなく、設備改善まで必要)

②法令違反が見つかり改善するまで生産停止

※日系企業でも環境法令違反は多い

③汚染型工程の運行停止指示を受け、外注先探しを行うもリスク有り

④サプライヤーが生産停止になり、調達が困難に

⑤大気汚染警報が出れば、工場稼働も物流もストップし、納期に間に合わない

⑥工事ができず、生産ラインの改造・拡張が停止

⑦日本人経営者が帰国できなくなる

⑧上記の各種コスト増により経営環境が悪化

 

環境規制は、日系企業だけを狙い撃ちしているという指摘もあるが、これは正確ではない。環境処罰企業の圧倒的多数は中国資本企業であり、日系企業は約23%程度である。実際に韓国資本企業が中国環境規制で撤退に追い込まれた事例が続出しているほか、欧米自動車工場の中国内サプライチェーンも寸断されて経営難に陥っている事例も見られるようになった。

 

中国、超強力環境取り締まり…廃業する韓国企業続出(1)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170921-00000021-cnippou-kr

中国、超強力環境取り締まり…廃業する韓国企業続出(2)

http://japanese.joins.com/article/674/233674.html

中国の車部品工場、環境規制で操業停止 GM・VW車に影響も

https://www.nikkei.com/article/DGXLZO21337210Q7A920C1FFE000/

中国が大型プロジェクトを中止へ、環境汚染が深刻な地域対象に

https://jp.reuters.com/article/china-pollution-idJPKCN1BW0DJ

 

2018年以降も新たな環境規制が続々登場

 

中国は2018年以降も新たな環境規制を続々打ち出している。主なものは次の通り。

①改正水汚染防止法の施行(201811日より)

②環境保護税法の施行(201811日より)

③新たな汚染排出許可証制度の導入(2017年より業種別に推進)

④土壌汚染防止法の制定(2018年頃?)

⑤各種排出基準の制定・改定・強化

⑥発生源モニタリング・排出口整備の推進(2017年より業種別に推進)

⑦環境アセス-環境検収制度の大改革(2016年より推進)

⑧環境各分野の第13次五ヵ年計画(2017年より続々公布)

 

この秋冬の厳しい大気環境規制を乗り切っても、その後も新たな環境規制が待ったなしで続々導入される。中国での日系企業環境対策は恒常的に強化しなければ生き残れないであろう。

 

旧態依然とした本社側の認識

 

このように強烈な環境規制・取締りが導入され、環境規制がすでに大きな経営リスクになっているにもかかわらず、本社側の認識が甘いというケースが多い。代表事例は次の通り

①「中国では汚染を垂れ流しており、環境規制はザルである」という昔のイメージのまま

 中国の公害は日本よりひどいため、工場の環境規制は甘いと誤解されている。今でも汚染垂れ流し事例は根絶できていないが、都市部では激減しており、主に事故や環境設備の故障に起因している。故意による汚染垂れ流しは環境汚染罪という刑法上の犯罪に相当し、その法人代表者は実刑判決を受けている。

②「問題があれば市政府の幹部を接待等して解決できる」という昔のやり方にこだわっている

 腐敗・汚職撲滅は徹底しており、行政側も応じなくなってきている。杓子定規的に法令を適用しないと、役人も地位が危ない。正規のルートで、理詰めで交渉するのは構わない。

③「日本の工場環境対策は中国より進んでおり中国の環境規制を楽にクリアできる」と思い込んでいる

 中国の環境規制の特殊性や企業環境管理の現場を理解していない。

 

日系企業のあるべき対応

 

①全社挙げての取り組み

②中国の環境規制を侮らずしっかり研究し、先を読んで対策を立てる

③過剰とも思えるぐらいの徹底した中国環境規制対応を行う

④サプライチェーン全体で環境規制対応を検討する

⑤戦略・情報・監査等面で、中国環境規制に詳しい専門家を活用

 

※中国環境規制の把握・対応には必ず原文全文や法体系を読み込む必要があるが、これらを把握できていないのに中国環境コンサル業務を行っているケースもあるので、第三者環境コンサル会社もしっかり検討する必要がある。

 

日系製造業には、これらを踏まえてこの秋冬の中国、特に京津冀及び周辺地区の厳しい環境規制をクリアして発展して頂きたい。この環境規制には、日系企業も対応に苦しんでいるが、中国資本企業はもっと悲惨な状況に追い込まれており、対応をしっかり行えるようになれば、中国内の競合他社は激減し、廃業にならなくても彼らの価格競争力は低下するようになるため、相対的には日系の経営環境はむしろ改善すると思われる。

 

2017年8月21日 (月)

第22回JCESC中国環境セミナー 2018年以降の製造業拠点向け中国環境規制対応 中上級編

日中環境協力支援センターでは、東京にて2018年2月27-28日に中国製
造業拠点担当者向け環境規制実務対応セミナーを開催いたします。

本セミナーでは、製造業(工場)環境・省エネ規制の最新動向とその対応
に焦点を絞って、実務面から解説を行います。

今回、新たに中国環境管理担当になられた方、初めてご参加の方、中国環
境規制の全体像を復習されたい方向けに「入門編」を、また最新情報をメイ
ンにお聞きになりたい方向けに「中上級編」を企画しました。


――――――――――――――――――――
■第22回JCESC中国環境セミナー
□日時:2018年2月28日(水)13:30~16:45
□テーマ:2017年以降の製造業拠点向け中国環境規制対応 中上級編
※第21回セミナー(初級編)とお間違え無いようご注意下さい
□会場:東京品川区(詳細はお申込み後にお知らせします)
□講師:日中環境協力支援センター 取締役 大野木昇司
□主な対象:
中国に工場を持つ製造業企業の環境・法規担当
□定員:40名

□プログラム

第1章 20187年以降の中国環境規制最新動向
・2018年以降の製造業向け中国環境規制の概観
中国環境制度改革の方向性
・VOCを主とする大気汚染規制
VOCでは濃度規制・総量規制・無組織(漏洩)排出規制・単独排汚費・
工場密閉化・生産工程エコ化・LDAR等を導入
大気汚染緊急規制でサプライチェーンが寸断
・変わる危険廃棄物管理制度
危険廃棄物リストが改定/電子マニフェストが導入/取締りの重点
・新たに導入される環境保護税と現行の排出費
排汚費が環境保護税にそのまま移行されるわけではない
地方通達が重要
・大改革中の新排出許可証制度
環境諸制度を新排出許可証制度に統合へ/総量規制盛り込まれる
業種別段階的に導入され2020年には全国全製造業が対象に
・大改革中の環境アセス/環境検収/三同時制度
事後管理強化のため過去の環境アセス不備で処罰される企業が激増
総量規制に引掛る、住民意見反対等で環境アセスが通らない事例が急増
・新たに導入される企業環境リスク規制
環境リスク調査/環境事故緊急対応プラン作成/環境責任保険
・諸制度改革で導入が進む汚染源モニタリング
企業側が環境コンプライアンスを証明しなければならない
・その他の動向
省エネ規制/CO2規制/土壌汚染規制/環境情報公開/台帳管理/グリーン製造業
2022年までの環境保護標準計画

第2章 環境管理実務・対応法の注意点(中上級)
・中国内製造業の環境管理部門の実情
  ブラックボックス化/専門的な第三者企業による監査が重要
・本社側の対応と現場の対応
・グローバル環境方針の落し穴
・過去のやり方を参考にすると大きな失敗に
・不可欠な早めの環境規制情報の収集
規制情報を事前に知る方法
・ローカルスタッフに要注意
・「日本のやり方で十分」の自己満足的やり方は禁物

第3章 当社の中国内企業環境マネジメントに関する業務紹介

質疑応答
※コンテンツは、最新の動向を踏まえて変更する可能性があります。

□詳細について
料金、申込方法、連絡先、講師略歴、優遇等は、以下URL参照
http://jcesc.com/seminar21-22.html

お気軽にお問合せ下さい。

第21回JCESC中国環境セミナー 製造業拠点向け中国環境規制対応 入門編

日中環境協力支援センターでは、東京にて2018年2月27-28日に中国製
造業拠点担当者向け環境規制実務対応セミナーを開催いたします。

本セミナーでは、製造業(工場)環境・省エネ規制の最新動向とその対応
に焦点を絞って、実務面から解説を行います。

今回、新たに中国環境管理担当になられた方、初めてご参加の方、中国環
境規制の全体像を復習されたい方向けに「入門編」を、また最新情報をメイ
ンにお聞きになりたい方向けに「中上級編」を企画しました。

――――――――――――――――――――
■第21回JCESC中国環境セミナー
□日時:2018年2月27日(火)13:30~16:45
□テーマ:製造業拠点向け中国環境規制対応 入門編
※第22回セミナー(中上級編)とお間違え無いようご注意下さい
□会場:東京品川区(詳細はお申込み後にお知らせします)
□講師:日中環境協力支援センター 取締役 大野木昇司
□主な対象:
中国に工場を持つ製造業企業の環境・法規担当
□定員:40名
※定員に達すると早めに受付を終了するため、お早めにお申し込み下さい。
□プログラム

第1章 環境法令体系の全体像と仕組み
・中国の製造業拠点向け環境法令の仕組み
法律・条例・弁法・規定と計画・事業方案・意見
法令順守の実情
・中央と地方との法令制度の関係
・標準政策と各種環境標準
・環境法令の読み方
・制度別の環境規制概要解説
  環境アセス/濃度規制/総量規制/モニタリング/排汚費(環境税)
/排出許可証
・分野別の環境規制概要解説
  大気汚染対策/排水規制/産廃規制/騒音規制/省エネ規制/
CO2規制/化学物質規制

第2章 急増する環境罰則と環境訴訟
・別次元に昇華した中国の環境取締り
・実状と日系企業事例
・環境罰則の種類
・環境取締りの重点とその方法
・環境処罰の初動対応

第3章 環境管理実務・対応法の注意点(初級)
・日本との違いを理解する
・中国の法令・制度を理解する

第4章 当社の中国内企業環境マネジメントに関する業務紹介
質疑応答

※コンテンツは、最新の動向を踏まえて変更する可能性があります。

□詳細について
料金、申込方法、連絡先、講師略歴、優遇等は、以下URL参照
http://jcesc.com/seminar21-22.html
お気軽にお問合せ下さい。

2016年8月30日 (火)

中国内日系製造業環境管理や中国向け電子製品・部品メーカーが対応すべき中国環境管理政策の新たな動き

 現在中国内での製造業環境管理関係者の注目点は、2015年1月1日の改定版環境保護法とそれに伴う罰則強化、2016年1月1日の改定版とそれに伴うVOC(揮発性有機化合物)廃ガス規制強化、土壌汚染防止行動計画(通称、土十条)による土壌汚染防止法の制定(2018年頃の見込み)、CO2排出規制などであろう。これらも当然重要であり、セミナーでも解説する予定であるが、しかしこれではウォッチは不充分である。中国環境規制は、日本では報じられていない大きな変革の流れがいくつもあり、今後その対応が必要になってくる。

・規制緩和と規制強化

 国務院は現在、経済刺激策の一環として、また経済構造転換のため、規制緩和を進めている。具体的には審査を廃止して届出制にしたり、中央審査を地方審査にしたり、管理制度そのものをなくしたりしている。標準分野では「強制標準の整理・統合・簡素化」、「企業標準の自己宣言公開制度化」が進んでいる。環境分野でもこの流れにあり、例えば企業上場前環境審査を廃止し、中国版PRTRとも称される危険化学品環境管理登記弁法を廃止した。  その一方で、汚染排出規制については大幅に強化している。排出基準値は今や日本より厳しく、排出量に対して課金する汚染排出費制度、個別工場向け総量規制の導入といった制度面のみならず、今までは甘かった環境制度運用の厳格化、立入検査等取締り強化、日数罰金等処罰強化なども進めている。

・環境アセス制度の改革

 環境汚染を有効に改善できない要因の一つに環境アセス制度の不徹底が挙げられていた。環境汚職の温床ともなっていたが、環境大臣交代により停滞していた環境アセス制度改革が加速した。具体的には、環境アセス有資格事業者の行政組織からの分離、計画環境アセス強化、小影響事業の審査制から届出制への変更による大中影響事業へのリソース集中、環境アセス報告書の情報公開等が挙げられる。

・環境諸制度を排出許可証主体の環境管理制度に統合

 これまでバラバラにできていた環境アセス、排出申告、排出許可証、総量規制、濃度規制、排出費、排出権取引などの環境諸制度を、「排出許可証」を軸とした環境管理制度に統合する方向性を、環境保護省が打ち出した。これまで以上に総量規制が強調されることになり、汚染型産業はゼロエミッション対策をせざるを得なくなっている。

・全包囲網的な環境監視

 最近の環境規制は行政による強制力の強化のみならず、経済界や住民の力を活用した環境監視強化などの全包囲網的な環境監視に特徴がある。

 行政系の強制力には立入検査等取締り、公安機関との連携、司法機関との連携、オンラインモニタリング強化(ビッグデータ、IoT等の影響で大きく強化される見込み)等がある。

 経済界を活用した環境監視には環境責任保険(保険会社による環境リスクの査定あり)、企業環境信用制度、グリーンサプライチェーン制度等がある。

 住民の力を活用した環境監視には環境情報公開、住民通報、市民参加、公益訴訟等がある。

・グリーン製造工場政策

 国務院「中国製造2025」の一環として「グリーン製造工場」の方針が打ち出された。これは、単なる排出規制ではなく、製造工程そのもののエコ化・グリーン化を指す。具体的には原材料・エネルギー・水の使用効率向上、汚染排出とCO2排出原単位の改善、環境・省エネ・リビルド産業の振興、有毒有害物質の代替、エネルギーや産業廃棄物のリサイクル推進、エコデザイン・拡大生産者責任制、LCA徹底化、クリーンエネルギーへの転換、工業団地単位でのエコ化などである。

 排出規制は環境保護省の専権事項であるが、製造工程での環境対策や省エネはむしろ工業・情報化省や国家発展改革委員会の担当となっており、中国の環境行政だけを見て環境管理していれば見落とすことになる。

・多種の環境ラベルを大統合へ

 中国には現在、環境ラベル認証制度が乱立している。代表的なものだけでエネルギー効率ラベル、環境ラベル、環境ラベル低炭素認証、省エネ(節水)製品ラベル、低炭素製品認証、リサイクルラベル、中国RoHS、トップランナー制度、エネ効率スターラベル等がある。さらにカーボンフットプリント、製品エコデザイン制度も検討されている。省庁ごとの利権もあって乱立状態となったが、今では行政側も業務重複による浪費となり、メーカー側もそれぞれ認証を取得すればコストがかさみ、一般消費者も選ぶのに苦労することになるなど弊害が目立つようになった。2014年にようやくこれらのラベル・認証制度を大統合する方針が示された。現在、環境ラベル大統合に向けた検討が進められている。

 中国内日系製造業環境管理や中国向け電子製品・部品メーカー等は以上の内容について対応が求められている。以下の10月セミナーではこれらの内容についても解説する予定である。

□第15回JCESCセミナー「製造業向け中国環境規制の最新動向とその対応」

・テーマ:製造業向け中国環境規制の最新動向とその対応  ~VOC等大気汚染、CO2、土壌、危険廃棄物規制等~

・日時/場所:2016年10月4日(火)13:30~16:45 東京都品川区 ・定員:40名(定員に達すれば受付終了)

・プログラム、講師略歴、料金、申込方法、優遇等は以下URL参照 http://www.jcesc.com/jcescseminar/seminar15_04oct16tk.html

□第16回JCESCセミナー「中国の電子製品環境規制の最新動向とその対応」

・テーマ:中国の電子製品環境規制の最新動向とその対応  ~中国RoHS2.0・WEEE、大統合に向かうエコラベル制度等~

・日時/場所:2016年10月6日(木)13:30~16:45 東京都品川区 ・定員:40名(定員に達すれば受付終了)

・プログラム、講師略歴、料金、申込方法、優遇等は以下URL参照 http://www.jcesc.com/jcescseminar/seminar16_06oct16tk.html

2015年9月 5日 (土)

「新大気汚染防止法」解説:製造業は更なる対応が必須 環境技術ニーズも増大

 全人代常務委員会は8月29日、改定版大気汚染防止法を公布した。15年ぶりの改定となる新法は2016年1月1日より施行される。新法では、重点地域大気汚染共同対策、重汚染天候対応、大気対策基準と期限内改善計画の章が新たに設けられ、2015年1月1日より施行された改定版環境保護法を踏まえて罰則が大幅に強化され、脱硝・VOC(揮発性有機化合物)対策・水銀除去・POPs(残留性有機汚染物質)・有毒有害大気汚染対策が導入された。地方行政の権限と責任を強化したほか、大気汚染対策に関してより細かなケースについても規定し、この15年間で下位法令や地方法令などで規定された内容を数多く盛り込んでいる。これにより、大気汚染対策は一層進み、製造業にとっては更なる対応が必要となり、大気汚染処理分野の市場は大きく拡大するとみられる。その概要は以下の通り。

■大気汚染対策の監督管理
 新法では、国務院は、各省級政府の大気環境質改善目標や大気汚染防止重点任務の達成状況を審査し、その結果を公表することを新たに規定した。
 大気対策基準と期限内改善計画について一つの章を設け、大気環境質基準や大気汚染排出基準や期限内大気改善計画を策定する場合、関連部門・業界団体・企業・住民などに意見を募るとし、省級環境行政部門はそれらの基準を一般公開するとした。また石炭・バイオマス燃料・塗料などVOCを含む製品やボイラ製品要求などでは大気環境保護要求を盛り込み、ガソリン品質基準は国家大気汚染規制要求に対応し、排気ガス基準に合わせて策定するとした。
 環境影響評価手続きの義務付けは不変であるが、新法ではその文書を公表するとした。大気汚染排出基準の順守、重点大気汚染物排出総量規制の順守は不変であるが、総量規制では現行の重点「2つの規制区」(酸性雨規制区及びSO2規制区)の文言が廃止されて、全国を対象とすることとなった。これに伴い、「2つの規制区」内で定められている汚染排出許可証制度を全国に拡大するとし、排出権取引事業の推進を規定した。
 工業廃ガスを排出する企業、有毒有害大気汚染物を排出する企業、集中熱供給の石炭熱源経営事業者、その他汚染排出許可管理対象の企業は、汚染排出許可証を取得するものとした。
 法令に基づき大気汚染排出口を整えることを新たに規定した。また隠蔽排出、モニタリングデータの改竄・偽造、立入検査逃れの臨時操業停止、大気汚染処理施設の不正常稼働を禁じた。
 企業は、工業廃ガスや有毒有害大気汚染物質の排出状況をモニタリングし、その生データを保管するとした。そのうち重点汚染排出企業(省・市政府がリストを公表)は、自動モニタリング設備を設置・使用し、環境行政部門とネットワーク接続し、その設備の正常稼働を保障し、排出情報を公表するとした。この部分は部門規章等の別の下位法令で規定されていたが、大気汚染防止法の改定で新たに盛り込まれることとなった。
 現行法では大気環境を深刻に汚染する設備の淘汰制度を規定しているが、新法では設備だけでなく生産工程や製品も淘汰対象とした。大気汚染損害評価制度を新たに規定した。汚染排出企業に対する検査手法として、現行法で規定している立入検査だけでなく、自動モニタリング、リモートセンシング、遠赤外線撮影等も規定した。
 法令に違反して大気汚染を排出して深刻な汚染を引き起こした、または引き起こし得る場合、または証拠隠滅のおそれのある場合、環境行政部門は施設・設備・物品の封鎖・差押え等の行政強制措置を行えると新たに規定した。
 現行法では、誰にでもどの組織にも通報の権利があると簡単な規定のみであるが、新法では通報しやすい連絡先の整備、密告含め通報者の権利保護、通報内容の調査と結果公表、通報者への奨励など詳細に規定した。

■大気汚染防止措置
 大気汚染防止措置の章では、①石炭とその他エネルギー、②工業汚染対策、③自動車・船舶等汚染対策、④砂埃汚染対策、⑤農業とその他汚染対策の5節に分けて詳細に規定している。
 石炭とその他エネルギーの節では、一次エネルギーに占める石炭の割合の削減、クリーンな石炭の利用、石炭のクリーン利用、炭層ガス・石炭ボタ・シェールガス・天然ガス・電力・再生可能エネルギー等の奨励を定め、特に高汚染型燃料禁止区域では燃料転換を義務付けた。また石炭火力発電等石炭使用事業者に対し、集塵・脱硫・脱硝・水銀除去等の措置を一体的に導入するよう求めた。新法では脱硝・水銀除去を新たに盛り込んだ。
 工業汚染対策の節では、現行法の脱硫措置導入に加えて、脱硝・VOC対策を盛り込んだ。特にVOC対策では、低毒・低VOC型の有機溶剤の奨励、VOC含有原材料・製品の生産・輸入・販売・使用時の含有量規制順守、VOC廃ガスを排出する生産・サービス活動の密閉空間化や排出削減措置、工業塗装企業の低VOC型塗料の義務付けと記録台帳の保管、石油・化学工業でのVOC漏出防止導入を盛り込んだ。
 自動車・船舶等汚染対策の節では、自動車・船舶に加えて農機具など非道路用移動機械も対象とした。環境規程を順守できない場合、リコールの対象とした。排気ガス基準を守れない場合、修理を義務付け、それでも順守できなければ強制廃棄となるなど、汚染型自動車への圧力を強化した。
 砂埃汚染対策では、建設工事現場での砂埃・粉塵対策を現行法より詳細に規定した。
 農業とその他汚染対策の節では、農業分野のみならず、畜産養殖汚染対策、屋外焼畑禁止、さらには指定の有害有毒大気汚染物質に対する環境リスク管理や定期モニタリング、POPsや焼却施設への対策、悪臭ガス排出対策(現行法にも規定あり)、飲食店・火葬場・自動車修理・ドライクリーニング対策、オゾン層破壊物質の生産・使用・輸出入の総量規制と割当管理(現行法にも規定あり)を規定している。

■重点地域大気汚染共同対策と重汚染天候対応
 重点地域大気汚染共同対策は新たに設けられた章であり、行政区域を越えた広域的な大気環境対策を盛り込んでいる。重汚染天候対応も新たに設けられた章であり、深刻な大気汚染状態が続くことが予測される場合、建設工事の停止、自動車走行規制、工場生産制限、学校屋外活動停止などの緊急対策措置を発動することを盛り込んだ。

■大幅に強化された処罰
 法的責任の章では、処罰金額を大きく引き上げた。例えば大気汚染排出基準を超えた場合、現行法では期限内改善命令と1万~10万元の罰金となっているが、新法では改善命令または生産停止改善と10万~100万元の罰金となっている。新環境保護法で規定された日数罰金も盛り込まれているため、現行法の上限50万元が、理論上は上限がなくなる。このほか、罰則規定が増え、90近くの行為を罰則対象とするなど、より詳細になった。

■今後の注意点
 なお、中国の法律は一般に原則・方向性・方針的な内容が多く、多くの条項で詳細は別途策定する下位法令や標準規格を参照するように書かれており、今後公布される見込みの下位法令や通達、重点汚染排出企業リスト、有毒有害物質リスト、標準規格などの情報をしっかりフォローし、対応していく必要がある。

■企業の対応すべき内容
(当社有料会員企業にのみ提供)

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