2016年8月30日 (火)

中国内日系製造業環境管理や中国向け電子製品・部品メーカーが対応すべき中国環境管理政策の新たな動き

 現在中国内での製造業環境管理関係者の注目点は、2015年1月1日の改定版環境保護法とそれに伴う罰則強化、2016年1月1日の改定版とそれに伴うVOC(揮発性有機化合物)廃ガス規制強化、土壌汚染防止行動計画(通称、土十条)による土壌汚染防止法の制定(2018年頃の見込み)、CO2排出規制などであろう。これらも当然重要であり、セミナーでも解説する予定であるが、しかしこれではウォッチは不充分である。中国環境規制は、日本では報じられていない大きな変革の流れがいくつもあり、今後その対応が必要になってくる。

・規制緩和と規制強化

 国務院は現在、経済刺激策の一環として、また経済構造転換のため、規制緩和を進めている。具体的には審査を廃止して届出制にしたり、中央審査を地方審査にしたり、管理制度そのものをなくしたりしている。標準分野では「強制標準の整理・統合・簡素化」、「企業標準の自己宣言公開制度化」が進んでいる。環境分野でもこの流れにあり、例えば企業上場前環境審査を廃止し、中国版PRTRとも称される危険化学品環境管理登記弁法を廃止した。  その一方で、汚染排出規制については大幅に強化している。排出基準値は今や日本より厳しく、排出量に対して課金する汚染排出費制度、個別工場向け総量規制の導入といった制度面のみならず、今までは甘かった環境制度運用の厳格化、立入検査等取締り強化、日数罰金等処罰強化なども進めている。

・環境アセス制度の改革

 環境汚染を有効に改善できない要因の一つに環境アセス制度の不徹底が挙げられていた。環境汚職の温床ともなっていたが、環境大臣交代により停滞していた環境アセス制度改革が加速した。具体的には、環境アセス有資格事業者の行政組織からの分離、計画環境アセス強化、小影響事業の審査制から届出制への変更による大中影響事業へのリソース集中、環境アセス報告書の情報公開等が挙げられる。

・環境諸制度を排出許可証主体の環境管理制度に統合

 これまでバラバラにできていた環境アセス、排出申告、排出許可証、総量規制、濃度規制、排出費、排出権取引などの環境諸制度を、「排出許可証」を軸とした環境管理制度に統合する方向性を、環境保護省が打ち出した。これまで以上に総量規制が強調されることになり、汚染型産業はゼロエミッション対策をせざるを得なくなっている。

・全包囲網的な環境監視

 最近の環境規制は行政による強制力の強化のみならず、経済界や住民の力を活用した環境監視強化などの全包囲網的な環境監視に特徴がある。

 行政系の強制力には立入検査等取締り、公安機関との連携、司法機関との連携、オンラインモニタリング強化(ビッグデータ、IoT等の影響で大きく強化される見込み)等がある。

 経済界を活用した環境監視には環境責任保険(保険会社による環境リスクの査定あり)、企業環境信用制度、グリーンサプライチェーン制度等がある。

 住民の力を活用した環境監視には環境情報公開、住民通報、市民参加、公益訴訟等がある。

・グリーン製造工場政策

 国務院「中国製造2025」の一環として「グリーン製造工場」の方針が打ち出された。これは、単なる排出規制ではなく、製造工程そのもののエコ化・グリーン化を指す。具体的には原材料・エネルギー・水の使用効率向上、汚染排出とCO2排出原単位の改善、環境・省エネ・リビルド産業の振興、有毒有害物質の代替、エネルギーや産業廃棄物のリサイクル推進、エコデザイン・拡大生産者責任制、LCA徹底化、クリーンエネルギーへの転換、工業団地単位でのエコ化などである。

 排出規制は環境保護省の専権事項であるが、製造工程での環境対策や省エネはむしろ工業・情報化省や国家発展改革委員会の担当となっており、中国の環境行政だけを見て環境管理していれば見落とすことになる。

・多種の環境ラベルを大統合へ

 中国には現在、環境ラベル認証制度が乱立している。代表的なものだけでエネルギー効率ラベル、環境ラベル、環境ラベル低炭素認証、省エネ(節水)製品ラベル、低炭素製品認証、リサイクルラベル、中国RoHS、トップランナー制度、エネ効率スターラベル等がある。さらにカーボンフットプリント、製品エコデザイン制度も検討されている。省庁ごとの利権もあって乱立状態となったが、今では行政側も業務重複による浪費となり、メーカー側もそれぞれ認証を取得すればコストがかさみ、一般消費者も選ぶのに苦労することになるなど弊害が目立つようになった。2014年にようやくこれらのラベル・認証制度を大統合する方針が示された。現在、環境ラベル大統合に向けた検討が進められている。

 中国内日系製造業環境管理や中国向け電子製品・部品メーカー等は以上の内容について対応が求められている。以下の10月セミナーではこれらの内容についても解説する予定である。

□第15回JCESCセミナー「製造業向け中国環境規制の最新動向とその対応」

・テーマ:製造業向け中国環境規制の最新動向とその対応  ~VOC等大気汚染、CO2、土壌、危険廃棄物規制等~

・日時/場所:2016年10月4日(火)13:30~16:45 東京都品川区 ・定員:40名(定員に達すれば受付終了)

・プログラム、講師略歴、料金、申込方法、優遇等は以下URL参照 http://www.jcesc.com/jcescseminar/seminar15_04oct16tk.html

□第16回JCESCセミナー「中国の電子製品環境規制の最新動向とその対応」

・テーマ:中国の電子製品環境規制の最新動向とその対応  ~中国RoHS2.0・WEEE、大統合に向かうエコラベル制度等~

・日時/場所:2016年10月6日(木)13:30~16:45 東京都品川区 ・定員:40名(定員に達すれば受付終了)

・プログラム、講師略歴、料金、申込方法、優遇等は以下URL参照 http://www.jcesc.com/jcescseminar/seminar16_06oct16tk.html

2015年9月 5日 (土)

「新大気汚染防止法」解説:製造業は更なる対応が必須 環境技術ニーズも増大

 全人代常務委員会は8月29日、改定版大気汚染防止法を公布した。15年ぶりの改定となる新法は2016年1月1日より施行される。新法では、重点地域大気汚染共同対策、重汚染天候対応、大気対策基準と期限内改善計画の章が新たに設けられ、2015年1月1日より施行された改定版環境保護法を踏まえて罰則が大幅に強化され、脱硝・VOC(揮発性有機化合物)対策・水銀除去・POPs(残留性有機汚染物質)・有毒有害大気汚染対策が導入された。地方行政の権限と責任を強化したほか、大気汚染対策に関してより細かなケースについても規定し、この15年間で下位法令や地方法令などで規定された内容を数多く盛り込んでいる。これにより、大気汚染対策は一層進み、製造業にとっては更なる対応が必要となり、大気汚染処理分野の市場は大きく拡大するとみられる。その概要は以下の通り。

■大気汚染対策の監督管理
 新法では、国務院は、各省級政府の大気環境質改善目標や大気汚染防止重点任務の達成状況を審査し、その結果を公表することを新たに規定した。
 大気対策基準と期限内改善計画について一つの章を設け、大気環境質基準や大気汚染排出基準や期限内大気改善計画を策定する場合、関連部門・業界団体・企業・住民などに意見を募るとし、省級環境行政部門はそれらの基準を一般公開するとした。また石炭・バイオマス燃料・塗料などVOCを含む製品やボイラ製品要求などでは大気環境保護要求を盛り込み、ガソリン品質基準は国家大気汚染規制要求に対応し、排気ガス基準に合わせて策定するとした。
 環境影響評価手続きの義務付けは不変であるが、新法ではその文書を公表するとした。大気汚染排出基準の順守、重点大気汚染物排出総量規制の順守は不変であるが、総量規制では現行の重点「2つの規制区」(酸性雨規制区及びSO2規制区)の文言が廃止されて、全国を対象とすることとなった。これに伴い、「2つの規制区」内で定められている汚染排出許可証制度を全国に拡大するとし、排出権取引事業の推進を規定した。
 工業廃ガスを排出する企業、有毒有害大気汚染物を排出する企業、集中熱供給の石炭熱源経営事業者、その他汚染排出許可管理対象の企業は、汚染排出許可証を取得するものとした。
 法令に基づき大気汚染排出口を整えることを新たに規定した。また隠蔽排出、モニタリングデータの改竄・偽造、立入検査逃れの臨時操業停止、大気汚染処理施設の不正常稼働を禁じた。
 企業は、工業廃ガスや有毒有害大気汚染物質の排出状況をモニタリングし、その生データを保管するとした。そのうち重点汚染排出企業(省・市政府がリストを公表)は、自動モニタリング設備を設置・使用し、環境行政部門とネットワーク接続し、その設備の正常稼働を保障し、排出情報を公表するとした。この部分は部門規章等の別の下位法令で規定されていたが、大気汚染防止法の改定で新たに盛り込まれることとなった。
 現行法では大気環境を深刻に汚染する設備の淘汰制度を規定しているが、新法では設備だけでなく生産工程や製品も淘汰対象とした。大気汚染損害評価制度を新たに規定した。汚染排出企業に対する検査手法として、現行法で規定している立入検査だけでなく、自動モニタリング、リモートセンシング、遠赤外線撮影等も規定した。
 法令に違反して大気汚染を排出して深刻な汚染を引き起こした、または引き起こし得る場合、または証拠隠滅のおそれのある場合、環境行政部門は施設・設備・物品の封鎖・差押え等の行政強制措置を行えると新たに規定した。
 現行法では、誰にでもどの組織にも通報の権利があると簡単な規定のみであるが、新法では通報しやすい連絡先の整備、密告含め通報者の権利保護、通報内容の調査と結果公表、通報者への奨励など詳細に規定した。

■大気汚染防止措置
 大気汚染防止措置の章では、①石炭とその他エネルギー、②工業汚染対策、③自動車・船舶等汚染対策、④砂埃汚染対策、⑤農業とその他汚染対策の5節に分けて詳細に規定している。
 石炭とその他エネルギーの節では、一次エネルギーに占める石炭の割合の削減、クリーンな石炭の利用、石炭のクリーン利用、炭層ガス・石炭ボタ・シェールガス・天然ガス・電力・再生可能エネルギー等の奨励を定め、特に高汚染型燃料禁止区域では燃料転換を義務付けた。また石炭火力発電等石炭使用事業者に対し、集塵・脱硫・脱硝・水銀除去等の措置を一体的に導入するよう求めた。新法では脱硝・水銀除去を新たに盛り込んだ。
 工業汚染対策の節では、現行法の脱硫措置導入に加えて、脱硝・VOC対策を盛り込んだ。特にVOC対策では、低毒・低VOC型の有機溶剤の奨励、VOC含有原材料・製品の生産・輸入・販売・使用時の含有量規制順守、VOC廃ガスを排出する生産・サービス活動の密閉空間化や排出削減措置、工業塗装企業の低VOC型塗料の義務付けと記録台帳の保管、石油・化学工業でのVOC漏出防止導入を盛り込んだ。
 自動車・船舶等汚染対策の節では、自動車・船舶に加えて農機具など非道路用移動機械も対象とした。環境規程を順守できない場合、リコールの対象とした。排気ガス基準を守れない場合、修理を義務付け、それでも順守できなければ強制廃棄となるなど、汚染型自動車への圧力を強化した。
 砂埃汚染対策では、建設工事現場での砂埃・粉塵対策を現行法より詳細に規定した。
 農業とその他汚染対策の節では、農業分野のみならず、畜産養殖汚染対策、屋外焼畑禁止、さらには指定の有害有毒大気汚染物質に対する環境リスク管理や定期モニタリング、POPsや焼却施設への対策、悪臭ガス排出対策(現行法にも規定あり)、飲食店・火葬場・自動車修理・ドライクリーニング対策、オゾン層破壊物質の生産・使用・輸出入の総量規制と割当管理(現行法にも規定あり)を規定している。

■重点地域大気汚染共同対策と重汚染天候対応
 重点地域大気汚染共同対策は新たに設けられた章であり、行政区域を越えた広域的な大気環境対策を盛り込んでいる。重汚染天候対応も新たに設けられた章であり、深刻な大気汚染状態が続くことが予測される場合、建設工事の停止、自動車走行規制、工場生産制限、学校屋外活動停止などの緊急対策措置を発動することを盛り込んだ。

■大幅に強化された処罰
 法的責任の章では、処罰金額を大きく引き上げた。例えば大気汚染排出基準を超えた場合、現行法では期限内改善命令と1万~10万元の罰金となっているが、新法では改善命令または生産停止改善と10万~100万元の罰金となっている。新環境保護法で規定された日数罰金も盛り込まれているため、現行法の上限50万元が、理論上は上限がなくなる。このほか、罰則規定が増え、90近くの行為を罰則対象とするなど、より詳細になった。

■今後の注意点
 なお、中国の法律は一般に原則・方向性・方針的な内容が多く、多くの条項で詳細は別途策定する下位法令や標準規格を参照するように書かれており、今後公布される見込みの下位法令や通達、重点汚染排出企業リスト、有毒有害物質リスト、標準規格などの情報をしっかりフォローし、対応していく必要がある。

■企業の対応すべき内容
(当社有料会員企業にのみ提供)

2015年8月24日 (月)

第12回JCESCセミナー:製造業向け中国環境規制対応実務講座(10月2日)ご案内

 日中環境協力支援センターでは、東京品川にて10月2日に中国環境マネジメント実務講座セミナーを開催いたします。皆様のご参加をお待ち申し上げます。
 中国では今年より環境保護法が改定施行され、環境税法など54の付随措置が続々制定されています。この環境保護法の枠組みのほかにも、VOC規制、土壌汚染規制、CO2排出規制、省エネ規制、危険廃棄物管理強化、公益訴訟推進など、中国内の製造業をめぐる環境管理の情勢は激変しています。
 中国に工場をお持ちの企業にとって必見となる環境リスク対策実務講座です。

■第12回JCESC中国環境セミナー

□日時:2015年10月2日(金)13:30~16:45
□テーマ:製造業向け中国環境規制の最新動向とその対応
~改正環境保護法と付随措置、大気・CO2・土壌規制など環境法制激変への対応~
□会場:東京品川区(詳細はお申込み後にお知らせします)
□講師:日中環境協力支援センター 取締役 大野木昇司
□主な対象:
 中国内に生産工場を持つ日系企業の環境管理担当
□定員:40名

□主催者ご挨拶(セミナー趣旨):

 中国では2015年1月1日より新環境保護法が施行され、汚職対策が環境行政の現場にも浸透して、環境規制が大幅に強化されています。罰金処罰が大幅に増え、工場の責任者が拘留され、工場閉鎖が命じられ、刑事処罰されるケースが大幅に増えてきました。

 さらには環境情報公開、環境事故緊急対応プラン届出、公益訴訟、VOC規制強化、土壌汚染規制強化、環境保護税、危険廃棄物管理強化など新たな制度が次々に導入されており、今までの環境管理のやり方では法令違反になってしまいます。

 環境保護法には54の付随措置が定められる予定であり、現在半分ほど出来上がっています。このほか、地方政府が中央より厳しい環境規制を導入している例も多く、例えば大連市ならば中央の環境規制、遼寧省政府の環境規制、大連市政府の環境規制、金州新区政府の環境規制を守らなければなりません。

 さらには環境保護法の枠組みのほかにも、省エネ規制、CO2規制、化学物質規制などでも動きがありますので、こちらも留意が必要です。

 これら環境規制は、単なる環境管理組織だけで事足りるわけではなく、サプライチェーン全体に影響が出てくることや、融資や水道・電気・ガス等公定価格にも影響してきますので、まさしく工場全体、グループ全体、サプライチェーン全体での対応に迫られています。

 しかし中国の環境規制の数は多く、地方にも独自の環境規制があり、全体像がわかりにくい上、知らないうちに法令が策定・改定されて違反状態になっている懸念があります。現地の経済開発区(産業団地)の環境保護局が環境規制情報を知らせてくれる場合もありますが、全体像は分かりにくく、担当外だと説明してくれないことも多いのです。また環境法違反の誘致政策を導入しているところもあり、地方の言い分をそのまま受け取ることができないのも実情です。

 このような実情を踏まえ、中国進出企業の環境マネジメントは、全方位型、先手必勝、独自の環境情報収集態勢、専門家を交えた対応法の検討、環境法令順守監査、グローバルな環境対応が必要になってきます。

 本セミナーでは、中国内環境マネジメント全体像のうち、「排出管理」、「GHG管理/低炭素」、「工場管理」、「環境信用」の工場環境マネジメントに密接な部分に重点を絞って、実務面から解説を行います。
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□プログラム

【13:30~15:15】(1時間45分)
第一節 中国の汚染対策をめぐる状況と中国内企業環境マネジメントの全体像
 中国の汚染対策をめぐる状況
 中国企業環境マネジメントに関する情勢が激変
 環境取り締まり強化で日系企業も処罰増える
 中国環境制度体系
  中央規制と地方規制との関係、環境標準、地方基準
 環境法令規制の最新動向
  環境保護法と54の付随措置
  土壌汚染防止法、大気汚染防止法、CO2排出管理
 中国内企業環境マネジメントの全体像

第二節 汚染排出管理
 分野別の汚染排出管理
  水
  大気/悪臭
  VOC規制の全体像
  工業廃棄物/危険廃棄物
  騒音/振動/放射線等
  土壌汚染規制
 制度別の汚染排出管理
  汚染排出許可証
  汚染排出課徴金と環境保護税
  汚染排出規制基準
  汚染排出の監視・取引・記録(ICカード式管理)

第三節 GHG管理/低炭素
 GHG排出規制と対象企業リスト
 GHG排出枠取引

第四節 工場管理
 クリーナープロダクション
 エネルギー管理
  エネルギー監査
  エネルギー管理体系認証制度
 旧式生産設備淘汰

【15:25~16:45】(1時間20分)
第五節 環境信用
 環境情報公開
  企業環境情報公開弁法
  環境/CSR報告書
  中国版PRTR制度
 環境信用評価
  環境信用評価の概況
  他制度との連携(グリーン融資、公共料金、検査回数等)
 環境緊急対応
  突発的環境事件緊急対応プラン
  重度大気汚染時対応
  環境汚染責任保険

第六節 中国内企業環境マネジメントの注意点
 早めの情報収集/対応が必要
 全方位的な環境政策・法令モニタリング
 社内の情報収集態勢
 ローカルスタッフへの環境教育
 「日本のやり方で十分」のような自己満足的やり方は禁物
 環境規制・化学物質規制の策定を事前に知る方法
 環境法令の読み方
 日系企業の対応留意点

第七節 当社の中国内企業環境マネジメントに関する業務紹介
 環境法令情報(週刊レポ、法令速報)
 カスタマイズ型環境法令解説
 環境法令順守監査
 標準(規格基準)の意義と正規販売

質疑応答

□詳細について
料金、申込方法、講師略歴等は、以下URL参照
www.jcesc.com/jcescseminar/seminar12_02oct15k.html

お気軽にお問合せ下さい。

※本セミナーの案内は、以下サイトでも掲載されています。
中小企業ビジネス支援サイト J-Net21
 http://j-net21.smrj.go.jp/headline/event/222714.shtml
EICネット
 www.eic.or.jp/event/?act=view&serial=33775
JICA Parter
 http://partner.jica.go.jp/trainingseminardetail?id=a0f1000000BZTF7AAP&mode=DETAIL&retURL=%2Fapex%2FTrainingSeminarSearchForPrsn
C2J掲示板
 http://bbs.c2j.jp/thread-1682.html
エクスプロア中国ビジネス
 www.explore.ne.jp/business/seminar/seminar.php?id=119
中国標準規格総合サイト GB NAVI
 http://gbnavi.jp/entry-news.html?id=101012

2015年8月13日 (木)

中国内製造業での工場廃棄物管理 ~危険廃棄物では特に厳格管理が必要~

はじめに
 

 ここ1年ほど、江蘇省や遼寧省の日系企業担当者から、「これまで危険廃棄物の処理を委託していた事業者が営業停止処分を受けた。新しい委託先を探さなければならず、困っている」や「危険廃棄物処理料金が値上がりした」という情報が寄せられるようになった。

 製造企業(工場)から出される廃棄物には、一般工業固形廃棄物と危険廃棄物がある。危険廃棄物とは、腐食性、毒性、燃焼性、感染性などを持つ廃棄物のことで、具体的には国家危険廃棄物リストで定められた49カテゴリーの廃棄物(液体も含む)を指すが、これ以外にも危険廃棄物を判定する鑑別基準も定められている。ここで問題になるのは、管理が厳格で処理事業者が限定されている危険廃棄物であるため危険廃棄物処理に重点を置いてまとめる。
 

1.中国の固形廃棄物分類

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工場で行う廃棄物管理

 工場で行う日常的な廃棄物管理については、「①生産計画に基づく工業廃棄物管理計画を策定、当局に提出、②生産活動で発生した工業廃棄物や危険廃棄物を有資格事業者に委託処理(特に危険廃棄物では保有資格を厳しくチェックする必要がある)、③危険廃棄物を市外・省外に移転する場合、マニフェスト管理、④工業廃棄物や危険廃棄物の(委託)処理状況を当局に提出」という一連の流れがある。不法投棄した場合や、危険廃棄物を一般廃棄物に混入して一般廃棄物として処理委託した場合(この場合、判定基準に基づいて危険廃棄物と判定された場合、やはり危険廃棄物として管理する必要がある)はもちろん、有効な許可証のない事業者に処理を委託した場合や移転マニフェスト対応していない場合も、処罰されることになる。
 

 このうち上記の①と④について、過去の一般工業固形廃棄物と危険廃棄物の種類、発生量や処理委託先等、また新たな年度の危険廃棄物管理計画に関する情報を提出するよう義務付けている。この作業プロセスでは一部でIT化が進んでおり、例えば蘇州市では、毎月の一般工業固形廃棄物と危険廃棄物の状況、年間の危険廃棄物管理計画、危険廃棄物移転計画、危険廃棄物移転マニフェスト管理などをオンライン上で提出するよう義務付けており、また遼寧省瀋陽市の例では2014年の一般工業固形廃棄物と危険廃棄物の発生状況と2015年の危険廃棄物管理計画をオンライン上で提出するよう義務付けている。このように最近は紙版の報告書を提出する形式からオンライン上で提出する形式に移り変わっている。ただオンライン提出であろうと、廃棄物管理用の記録簿保管は必須であり、工場管理者としてはその廃棄物管理記録簿を時々チェックする必要がある。

 

処理事業者の選定方法
 

 処理事業者の選定では、インターネット等を活用して自社で探す場合と、現地環境保護局等に相談して探してもらう場合がある。一般工業固形廃棄物では、厳格な資格制度がないため、同じ地域で処理可能な事業者を探すのは比較的容易である。また危険廃棄物では、地方環境保護局が有資格事業者をネット上で公表しており、自社で連絡を取ることもでき、また当局の窓口機関で紹介を受けることもできる。
 

 A市にて工場を経営し、生産活動から一般工業固形廃棄物と危険廃棄物を排出しているとする。一般に、A市の誘致局や所在地開発区管理委員会に処理事業者について照会し、そこで紹介された事業者と処理内容について打ち合わせることになる。また、危険廃棄物処理事業者については、地方当局が名簿を公表しており、ネットからも閲覧できる。その際に、危険廃棄物処理事業者について、危険廃棄物49カテゴリーのうち該当するカテゴリーの許可を持っているか、有効期限は切れていないか、許可証に記載されている備考なども併せて確認する必要がある。
 

 例えば蘇州市(市中市である昆山市、呉江市、太倉市、常熟市、張家港市を含める)の2015420日に公表された最新版危険化学品処理企業リストには、約85社の企業名、許可証番号、住所、対応可能危険化学品カテゴリー、カテゴリー別の認可年間処理量、法定代表者、電話番号、有効期限(一般に3年間)のデータがある。この中には日本資本の蘇州瑞環化工有限公司(日本リファイン株式会社の子会社、対応項目は主に有機溶剤やエーテル系廃棄物)、蘇州同和資源総合利用有限公司(DOWAホールディングス株式会社の子会社、対応項目は主にPCB、貴金属廃液、有機溶剤等)などもある。
 

 ただし実際には、地域ごとに行政当局から処理事業者に関する実質的な指定がある、処理事業者の設立・運営に対する審査・要件が厳しく容易に設立できない、カテゴリーが49もあるため対応できる事業者が市内にあるとは限らない、処理事業者側では年間処理量に関する枠が決まっているなど、選択の幅は狭い。市や省など行政区をまたぐ危険廃棄物の移動は、制度上認められているが、通過する行政区や受け入れ側の環境当局に事前申請して同意を得る必要があるほか、移転マニフェスト手続きが必要であり、特に省級行政区を超える場合、非常に手間と時間がかかるため、実質的に移動が容易ではない。このため、工場内で発生する危険廃棄物の処理委託先がなく、工場敷地内に保管せざるを得ない状況も度々報告されていた。
 

 これに加えて、危険廃棄物処理場に対する監視・取り締まりが厳しくなっており、汚染対策投資の負担に耐え切れずに廃業する処理事業者も出てきている。ここ数年の環境取締りの中で、汚水処理場、ゴミ処理場、危険廃棄物処理場などの環境インフラで汚染対策が徹底されておらず、本来汚染を処理して環境を保全するはずの環境インフラが新たな汚染発生源になっている事実が明るみになっている。危険廃棄物処理事業者についても、許可証にないカテゴリーの危険廃棄物受け入れ、許可証有効期限が切れているのに経営を続けた、移転マニフェストを実行していない、焼却廃ガスが基準値を超過したなどの事例が絶えない。このため、国と地方はこれら環境インフラを重点監視対象に指定しており、汚染対策の不十分な事業者に罰金・閉鎖・操業停止改善などの罰則を科しており、処理事業者にとっては多額の汚染対策投資がのしかかっている。
 

 環境当局は、危険廃棄物処理事業者に対する監視・監督・指導を強化しているが、これは環境リスクを下げる意味で役立つものと思われるが、工場側からするとそれでも不安を払拭しきれない。中国の危険廃棄物処理事業者は、一般に見学受け入れに消極的である。このため、適正処理をしているかどうかの確認は日本より難しい。ただ、顧客になり得る企業に対して見学を受け入れる事業者もわずかに存在する。日系を含む外資系の処理事業者は見学受け入れに比較的寛容であり、また人脈ができていれば、現地の誘致局や環境保護局、開発区管理委員会などの機関の経由で見学を依頼することは可能であろう。

 

処理料金水準

 

 処理料金については、一般工業固形廃棄物の処理料金は一般に規定はなく、市場やコストによって決まるが、およそ1トン当たり1500元~3000元が多いようである。
 

 危険廃棄物の処理料金は一般に市政府物価局が定めるが、工業危険廃棄物(医療廃棄物除く)の固化埋立処分では1トン当たり3000元、焼却処理では同2700元、物理化学的処理では同1500元、特殊危険廃棄物処分では同8000元が目安となる。地方によってはこの料金は運搬費用を含める場合と含めない場合がある。
 

 例えば江蘇省蘇州市では、2013101日より、固化・埋立処分では1kgあたり2.00元(そのうち劇毒類は70.00元)、焼却では同2.8元、物理化学的処理では同1.3元、特殊危険廃棄物処分は同8.00元で10%以内の調整可能となっている(いずれも運搬費用は別途)。江蘇省無錫市では、2013719日の通達で、固化埋立処分では1kgあたり3.00元(調整可能幅を上限2割増、下限なしとする)、焼却では同2.80元(調整可能幅を上限3割増、下限なしとする)、物理化学的処理では同1.50元(調整可能幅を上限3割増、下限なしとする)、劇毒品処分は同90元以内としている。江蘇省徐州市では、20141010日の通達で、固化埋立処分では1kgあたり2.2元(調整可能幅を上限2割増、下限なしとする)、焼却では同2.80元(調整可能幅を上限3割増、下限なしとする)、物理化学的処理では同1.80元(調整可能幅を上限3割増、下限なしとする)、劇毒品処分は同70元以内としている。安徽省合肥市では、20141230日の通達で、1kgあたり1.80元~4.00元(運搬費用を含む)の項目別料金表を公表している。

 

江蘇省危険廃棄物処理業者の状況

江蘇省は日系の製造工場が非常に多いだけでなく、危険廃棄物処理事業者も非常に多い。201412月に環境保護省が公布した『2014年全国大中都市固形廃棄物環境汚染防止年報』によると、江蘇省は危険廃棄物経営許可証の発行数が最も多い。環境規制の厳格化も進めており、同省環境保護庁が20138月に公布した『危険廃棄物経営事業者汚染排出自社モニタリング業務規範化に関する通達』では、20141月より危険廃棄物事業者に対して自社モニタリング方案の策定・実行・情報公開を義務付け、これに違反した場合は許可証の更新申請を受理しないとした。特に、危険廃棄物の焼却・埋立に対する監視を強化しており、2014年上半期で焼却事業者5社に操業停止・改善命令を下した。

2で、同省の危険廃棄物処理事業者数と処理能力の推移を示した。2014年前半まで、事業者数・処理能力ともに安定しておらず、特に5月と7月に大幅に低下したが、年後半以降に安定してきた。ただし、ここでいう処理事業者には、回収・利用、前処理、埋立、焼却等の全てを含む。次に焼却事業者に絞ったものを示す。
 

2 江蘇省危険廃棄物処理業者数および処理能力合計の推移

20150813b_2出典:江蘇省環境保護庁ウェブサイトより筆者作成

  図3で、焼却処理事業者数と焼却処理能力の推移を示した。許可証の有効期限満了後も更新できず失効する事業者、新規参入あるいは処理能力拡張等のため、毎月増減を繰り返している。現在25社前後で推移しており、危険廃棄物処理事業者のうち、焼却能力を持つ事業者は全体の約10%に過ぎない。

3 江蘇省の危険廃棄物焼却処理
業者数および焼却処理能力の推移

20150813c_2出典:江蘇省環境保護庁ウェブサイトより筆者作成
 

まとめ

 

 危険廃棄物管理制度はより厳格に施行されるようになりつつある。行政による政策・制度の枠組みのみならず、情報公開による市民監視を通した、社会からの監視圧力も日増しに強まっており、今後廃棄物市場も一層の規範化が進むとみられる。こうした中、危険廃棄物処理事業者も厳格な対応が求められるようになり、一部に廃業も見られるようになった。在中国製造業にとっては、危険廃棄物処理先を探すのが容易でなくなり、困難に直面している。今後は当局ウェブサイトで正規の処理事業者を探し、処理費用の相場を踏まえつつ交渉する必要がある。また廃棄物管理のIT化も進んでおり、発生量管理・委託処理・将来計画等の情報もオンラインで提出し、また発生地点の監視カメラ導入・当局へのネットワーク化を求める地方も出てきており、これらへの対応も求められる。一方で、技術改善要求もおのずと高まっており、海外の先進的取組や技術の導入が加速している。日中関係の改善が進む中、危険廃棄物処理技術を有する日系企業にとっては好機ともいえる。

 

関連情報

 

 中国廃棄物管理対応のより詳細な情報は以下のセミナーを参考にして下さい。 

「中国の廃棄物リスク事例と実務のポイントを知るセミナー」
日時:2015929日(火) 14:0016:00
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http://www.amita-oshiete.jp/seminar/entry/002256.php

http://www.amita-net.co.jp/news/2015/08/post-146.html
 

参考文献・URL

江蘇省蘇州市危険廃棄物処理企業(20154月発表)

http://www.szhbj.gov.cn/hbj/gf.htm

江蘇省蘇州市危険廃棄物処理料金基準(20139月)

http://www.szhshb.com/Shownews.asp?id=50

江蘇省無錫市危険廃棄物処理料金基準(20137月)

http://wjj.chinawuxi.gov.cn/web101/zt/sqsf/7037033.shtml

江蘇省徐州市危険廃棄物処理料金基準(201410月)

http://xxgk.xz.gov.cn/xxgkdesc/xxgk_desc.jsp?manuscriptid=f97b852120d84c518cefd40d7f713cb7&zt=

安徽省合肥市危険廃棄物処理料金基準(201412月)

http://www.hfpi.gov.cn/n7216006/n9984511/n9984639/n9985122/37248568.html

環境保護省2014年全国大中都市固形廃棄物環境汚染防止年報』20151月)

http://www.zhb.gov.cn/zhxx/hjyw/201501/t20150105_293794.htm

大野木昇司、中根哲也2015)「中国における工場側から見た廃棄物処理対応」,『季刊環境技術会誌』(一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会)20157月号(通算160号)

2015年6月 3日 (水)

『水汚染防止行動計画』解説 ~水環境規制強化や新制度導入で2兆元の需要を喚起~

『水汚染防止行動計画』解説

水環境規制強化や新制度導入で2兆元の需要を喚起

 

はじめに

 

 国務院は416日、『水汚染防止行動計画』(「水十条」)を公布した。これは、今後当面の全国水汚染防止業務の行動ガイドラインとなる。「水十条」と称されるのは、10の分野ごとに一条を割いて方針を規定しており、合計10条あるためである。また20139月に『大気汚染防止行動計画』(「大気十条」)に次いでできた第二の汚染防止行動計画であり、今後年末から来年初め頃にかけて第三の汚染防止行動計画『土壌汚染防止行動計画』(「土十条」)が策定される予定である。なお、通常の五ヵ年計画と異なる中央省庁『行動計画』には、このほか『エネルギー発展戦略行動計画』、『循環経済発展戦略及び当面の行動計画』、『石炭火力省エネ高度化・改造行動計画』、『中国生物多様性保護戦略・行動計画』などがある。

 「水十条」で定めた具体的対策措置238件のうち、改善強化措置136件と研究模索措置12件のほか、改革・革新措置90件を重点的に打ち出している。

 

主な事業目標

 

 「水十条」が定めた事業目標は次の通り。①2020年までに、全国水環境質を段階的に改善し、汚染の深刻な水系を大幅に減らし、飲料水安全保障水準を継続的に高め、地下水の過剰汲み上げを厳格に抑制し、地下水汚染の悪化傾向をひとまず抑制し、近海域環境質を安定的に改善させ、京津冀(北京市-天津市-河北省)、長江デルタ、珠江デルタ等地域の水生態環境状況を好転させる、②2030年までに、全国水環境質の全体的改善を目指し、水生態系機能をひとまず回復する、③21世紀中頃までに、生態環境質を全面的に改善し、生態系の良性循環を達成する。主な指標は次の通り。2020年までに、長江・黄河・珠江・松花江・淮河・海河・遼河の7大重点流域水質「優良(Ⅲ類以上)」割合を全体の70%以上にし、地級以上の都市市街地の汚染・悪臭水系を10%以下に抑制し、地級以上の都市集中飲料水水源水質のⅢ類以上の割合を93%以上にし、全国地下水質の「非常に悪い」割合を約15%に抑え、近海域水質「優良(12)」割合を約70%にする。京津冀地域の使用機能喪失水系(超Ⅴ類)観測地点割合を約15ポイント減らし、長江デルタ・珠江デルタ地域では使用機能を喪失した水系の一掃を目指す。2030年までに、全国7大重点流域水質の「優良」割合を全体の75%以上にし、都市市街地汚染悪臭水系を一掃し、都市集中型飲料水水源水質のⅢ類以上の割合を全体の約95%以上にする。

 

10分野の対策措置

 

 以上の目標を達成するため、「水十条」は10分野の措置を定めた。

 第1条、汚染排出を全面抑制する。工業・都市生活・農業農村・船舶港湾等の汚染発生源について、相応の排出削減措置を打ち出した。①法に基づき「10小」企業(小型製紙・製革・染色・染料・コークス・硫黄製造・ヒ素製造・製油・メッキ・農薬産業の企業)を取締り、「10大」重点産業(製紙・コークス・アンモニア肥料・非鉄金属・染色・農産物副食品加工・原料薬製造・製革・農薬・メッキ産業)の対策を行い、工業クラスタ区汚染を集中的に処理し、②都市汚水処理施設の建設改造を進め、付随管網敷設・汚泥無害化処理処分を推進し、③畜産養殖汚染を防止し、農業面源汚染を抑制し、農村環境総合対策を実施し、④船舶汚染防止水準を高める。

 第2条、経済構造転換グレードアップを推進する。産業構造の調整、空間分布の最適化、循環型発展の推進は、経済構造転換グレードアップを推進するだけでなく、水汚染処理の重要な手段ともなる。①旧式生産能力の廃棄を加速し、②水質目標を踏まえ、環境面の市場参入規制を厳格化し、③産業発展分布・構造・規模を適正に定め、④工業水循環利用・再生水・海水利用等により、循環発展を推進する。

 第3条、水資源の節約・保護に着手する。①最も厳格な水資源管理制度を施行し、地下水の過剰採取を厳格に規制し、水利用総量を抑制する、②水利用効率を高め、工業・都市・農業節水を徹底する、③水資源を適正に保護し、水量調整を強化し、重要河川の生態水流量を保障する。

 第4条、科学技術による支援を強化する。①環境技術評価体系を整備し、共有プラットフォーム構築を強化して、先進実用技術を実証・普及する、②既存技術リソースを整理統合し、基礎研究・先駆技術研究開発を強化する、③環境産業市場を規範化し、環境サービス業の育成を加速し、先進実用技術・設備の産業化を推進する。

 第5条、市場メカニズム機能を発揮させる。水価格改革を加速し、汚水処理費・汚染排出費・水資源費等の費用徴収政策を整備し、税制を整備し、価格・税制・費用のレバレッジ効果を発揮させる。政府・民間投入を拡大し、多元的投資を促す。「トップランナー」制度の整備、グリーン融資の普及、地域間補償等の措置により、水環境対策に有利な奨励メカニズムを構築する。

 第6条、環境法取締り監督管理を厳格にする。①法令・基準の整備を加速し、法執行監督管理を強化し、各種環境違法行為を厳格に処罰し、違法建設事業を厳格に取り締まる、②行政法執行と刑事司法との連携を強化し、監督法執行メカニズムを整備する、③水環境モニタリングネットワークを整備し、省庁・地域・流域・海域を越えた汚染対策調整メカニズムを形成する。

 第7条、水環境管理を適切に強化する。①水質目標要求を達成していない地域では、期限内達成の業務方案を策定・実行し、汚染総量規制制度を進め、各種環境リスクを厳格に抑制し、突発的水環境汚染事件を適切に処理する、②汚染排出許可証管理を全面的に実行する。

 第8条、水生態環境安全を全力で保護する。①水源から蛇口までの全過程監督管理メカニズムを構築し、飲料水安全状況を定期的に公布し、地下水汚染を適正に防止し、飲料水の安全を確保する、②重点流域水汚染防止を推進し、河川水源等の水質の良い水系を保護する、③長江河口、珠江河口、渤海湾、杭州湾等の河口・湾内汚染を重点的に整備し、海岸埋め立て管理を厳格に行い、近海域環境保護を推進する、④大都市内の汚染・悪臭水系対策を強化し、直轄市・省都・計画単列市市街地で2017年末までに汚染・悪臭水系を一掃する。

 第9条、各主体の責任を明確化し、実行させる。全国水汚染防止業務協働メカニズムを構築する。地方政府は、現地水環境質に全責任を負い、水汚染防止特定業務方案を策定する。汚染排出事業者は、自社で汚染対策し、法令を厳格に順守する。流域別・地域別・海域別に、年次計画実施状況を審査し、各主体が責任を十分に果たすよう促す。

 第10条、住民参加・社会監督を強化する。国は、水質のベスト10都市・ワースト10都市リストと各省(区・市)水環境状況を定期的に公布する。法に基づき、水汚染防止関連情報を公開し、自主的に社会監督を受ける。住民・民間組織を重要環境取締り行動や重大水汚染事件の調査の全過程に参画させ、全住民行動枠組みを構築する。

 

重要な改革措置

 

 「水十条」では、以下のような多くの重要な改革措置が盛り込まれた。

 (一)自然資源用途規制制度の整備である。

 (二)水節約・集約利用制度の整備である。

 (三)生態保護レッドラインの策定、資源環境受容能力モニタリング予防警戒メカニズム構築である。

 (四)資源有償利用制度の実行である。水価格改革を加速する。県級以上の都市は2015年末までに、住民用段階的水価格制度を全面施行し、条件の整った行政鎮でも積極的に推進する。2020年末までに、非住民用水定額・計画超過累進加算制度を施行する。

 (五)生態補償制度の施行である。汚染排出権有償使用・取引実証事業を更に推進する。

 (六)環境市場の育成である。全国統一的な環境市場の育成と公平競争を阻害する規定・方法を廃止する。環境施設設計・建設・運営等分野の入札管理弁法・技術基準を整備する。監督管理行政部門・汚染排出事業者・環境サービス会社の責任・義務を明確にし、リスク分担・契約履行保障等のメカニズムを整備する。汚水・ゴミ処理・工業団地を重点として、環境汚染第三者処理を推進する。

 (七)民間資金を生態環境保護に誘導する市場化メカニズムの構築である。融資担保基金の設立を積極的に進め、環境設備融資リース業務の発展を推進する。株式、事業収益権、民活経営権、汚染排出権等の抵当融資担保を普及させる。環境パフォーマンス契約サービス、開発経営権益供与等により、民間資本の水環境保護への投資拡大を奨励する。

 (八)全ての汚染排出を厳格に監督管理する環境管理制度を構築・整備し、環境監督管理・行政取締りの独立性確保である。都市汚水処理施設の脱窒除リングレードアップ改造や、重点産業の特徴的汚染対策、港湾・埠頭・積卸場・船舶汚染防止等を強化する。国家環境監察員制度を検討構築し、環境監督管理ネットワーク化管理を実施する。

 (九)陸海を統合した生態系保護修復・汚染防止地域の連携メカニズムの構築である。

 (十)環境情報の適時公布、通報制度の整備、社会監督の強化である。地級以上の都市は2016年より四半期ごとに飲料水安全状況を公開する。2018年より、全ての県級市以上の都市は、飲料水安全状況情報を公開する。

 (十一)汚染排出許可制度の整備、企業・公共機関汚染排出総量規制制度の施行である。2015年末までに、国家監視重点汚染源、汚染排出権有償利用・取引実証地域の汚染源で汚染排出許可証発行を終え、その他汚染源は2017年末までに終える。水質改善・環境リスク防止を目標に、排出汚染物の種類・濃度・総量・排出先等を許可証管理対象にする。

 (十二)賠償制度の厳格実施と法に基づく刑事責任追及である。隠蔽配管設置または浸透井・浸透坑・鍾乳洞で有害有毒汚染物や病原体を含む汚水の排出・投棄、モニタリングデータの改ざん、水汚染処理施設を正常使用しない、または水汚染処理施設の未認可解体・放置等の環境違法行為を重点的に取り締る。生態環境に損害をもたらした責任者に対し、賠償制度を厳格に実行する。建設事業環境アセス分野の越権認可・未認可建設・手続き中の建設着工・試運転延長で検収を受けない等の違法建設事業を厳格に取り締まる。犯罪の疑いのある場合、法に基づき刑事責任を追及する。

 

期待される成果

 

 「水十条」の実行により期待される成果は以下の通り。

 (一)経済発展を最適化する。「水十条」は、旧式生産能力廃棄、空間分布最適化、循環発展推進、水利用効率向上、経済政策整備、市場メカニズム発揮等の措置により、経済構造転換グレードアップ、生産力構造最適化を促し、「安定成長」、「構造調整」、経済社会の持続的発展に貢献する。「水十条」実行により、GDPを約5.7兆元増やし、非農業雇用を計約390万人増やし、サービス業のGDPに占める割合を2.3%増やす。

 (二)環境産業を成長させる。「水十条」は汚染対策投資の拡大、汚染処理技術、環境設備の開発・産業化水準の大幅な向上等により、環境産業生産額を約1.9兆元増やし、このうち環境産業製品・サービスを約1.4兆元直接購入する。

 (三)体制メカニズムを整理する。「水十条」の施行により、水汚染防止税制・価格等の経済政策を整備し、水汚染防止分野で第三者処理・生態補償等の市場メカニズムの機能を大きく発揮させる。情報公開メカニズムを整備し、地方政府・企業・公共事業者の汚染対策責任を効果的に果たさせ、水汚染防止の恒久的メカニズムを構築・整備する。

 (四)民生を適切に改善する。2020年までに、住民の環境情報取得・環境対策参加のチャンネルを更に広げ、一般人が水汚染防止行動に積極的に参画できるようにする。

 

法令・制度整備や取締り強化

 

 「水十条」では法令・基準の整備を強調している。広域地方版や地方版の「水十条」が各地で策定される見込みであるほか、水汚染防止、海洋環境保護、汚染排出許可、化学品環境管理等法令の制改定ペースを加速し、環境質目標管理、環境機能区分、節水・循環利用、飲料水水源保護、汚染責任保険、水機能区監督管理、地下水管理、環境モニタリング、生態水流量保障、船舶・陸上汚染源対策等の法令を検討・制定する。各地は実状を踏まえ、地方水汚染防止法規を検討・起草する。また、地下水・地表水・海洋等の環境質基準、都市汚水処理・汚泥処理処分・農地排水等の汚染排出基準を制改定する。重点産業の水汚染物特別排出規制値、汚染防止技術政策、クリーナープロダクション評価指標体系を整備する。各地では、国家基準より厳格な地方水汚染排出基準を策定できる。

 また取締りの強化を強調している。全ての汚染排出事業者は、法に基づき排出基準を全面的に順守しなければならない。工業企業の汚染排出状況を逐一検査し、①基準順守企業は安定的に基準順守するよう措置を採り、②基準超過・総量超過企業は「イエローカード」警告を与え、一律に生産制限または生産停止改善措置を採り、③取締り後も基準未達成かつ状況が深刻な企業には「レッドカード」を与え、一律に操業停止・閉鎖処分にする。2016年より、環境「イエローカード」「レッドカード」企業リストを定期的に公開する。汚染排出事業者の排出基準順守状況を定期的に抽出検査し、その結果を一般公表する。

 「水十条」により、最も厳格な水資源管理制度を施行する。環境保護省によれば、国家産業政策に合致しない製紙・製革・染色・染料・コークス・硫黄製錬・ヒ素製錬・製油・メッキ・農薬分野の零細企業(通称「10小」企業)を厳格に取り締まるほか、排出原単位の高い製紙・コークス・窒素肥料・非鉄金属・染色・農業副食品加工・原料薬製造・製革・農薬・メッキの10産業について、クリーン改造を求めており、企業は全面的な排出基準順守が義務付けられる。環境保護省汚染防止司の陳永清副巡視員は、2016年よりイエローカード・レッドカード企業リストを定期的に公開し、基準超過・総量超過企業にイエローカード警告を、取締り後も基準未達成で状況が深刻な企業にはレッドカード処分を行い一律に操業停止・閉鎖する、と述べた。

 

「水十条」で生まれる約2兆元の環境市場

 

 「水十条」の水環境質量改善目標は、地域・流域水環境修復等総合型環境企業に対し、より多くの処理・運営・保守管理サービスの機会をもたらす。

 例えば、「十大」重点産業(製紙・コークス・アンモニア肥料・非鉄金属・染色・農産物副食品加工・原料薬製造・製革・農薬・メッキ産業)の特定整備や、大規模畜産養殖場(コミュニティ)の汚染防止では、環境産業のエンドオブパイプ処理から生産工程全体のクリーン改造総合サービスへの転換を推進しうる。工業団地の汚水集中処理やオンライン監視等に対する要求では、工業団地の水環境モニタリング・汚染防止・環境施設運営等第三者処理サービスの振興をもたらし得る。都市生活汚染処理・汚水処理施設グレードアップ改造・汚泥処理処分では、施設設計・設備製造・施設建設・運営保守等の産業に追い風となる。農村汚水処理の統一的計画・建設・管理では、都市汚水処理施設・サービスの農村への拡張を推進しうる。新規取水許可の厳格規制、再生水施設建設の整備要求により、再生水・海水利用産業の振興をもたらしうる。節水目標任務の審査、管網漏水率の抑制では、雨水利用・節水施設建設・製品生産・関連技術の発展を促進する。

 環境産業発展方式も徐々に転換することになる。「水十条」では、官民資本提携(PPP)、政府による環境サービス調達等の新方式を推進し、政府の環境固定資産投資を主とする従来型投資方法から、総合環境サービス提供方式に転換することになる。投資回収メカニズムの改善、民間融資手段の多元化、環境パフォーマンス型契約サービス推進等の措置により、投資者・建設運営者の協力を強化し、「投融資-建設-運行」を企業が一手に担う水環境整備総合サービス方式を整備していくことになる。また工業団地・畜産・重点産業企業の汚染対策のニーズ拡大により、専門的第三者処理サービスを推進する。

 専門家の試算では、「水十条」により生まれる直接的な環境産業製品・サービスの需要は14000億元を超え、間接的にはさらに5000億元もの需要を生み出すとされる。その一部として、第13次五ヵ年計画期間(2016年~2020年)、既存汚水処理場・新規汚水処理場の排水基準を国家1A基準に対応させるようにした場合、改造市場規模は1500億元超となり、年間平均成長率は30%超となる。一方、「水十条」は2017年までに超Ⅴ類水質の汚染水系を一掃するよう要求しており、同計画の投資額で計算すると、流域対策の市場規模は4000億元超となる。

 

まとめ

 

 「大気十条」がもたらした中国大気環境規制の強化や大気環境ビジネスの拡大などに与えたインパクトの大きさを見ると、「水十条」の策定は中国の水環境規制の強化や水環境ビジネスの拡大に大きな影響を与えるものと推測される。これを機に、工場等の製造事業者は排出規制基準の厳格化への対応や情報公開制度など新制度への対応を進めていく必要があり、また水環境ビジネス事業者にとっては大きな商機であると言えるが、第三者処理・PPPなどの新たな制度も踏まえながらビジネスモデルを構築していく必要がある。いずれにせよ、今後策定・改定される法律や下位法令、地方法令、排出基準等標準、政策制度の情報について引き続きフォローしてしっかり対応する必要がある。

 

参考

国務院『水汚染防止行動計画』配付に関する通達

http://www.gov.cn/zhengce/content/2015-04/16/content_9613.htm

人民日報記事:水十条詳説 2020年に7大重点流域の水質を改善

http://env.people.com.cn/n/2015/0416/c1010-26855242.html

中国環境報記事:水十条 2兆元産業の好機 環境企業は準備必要

http://www.cenews.com.cn/sylm/hjyw/201504/t20150416_791042.htm

2015年5月13日 (水)

今年から始まった企業環境情報公開制度 多くの日系企業も対象に

 

最新の注目すべき中国環境規制の動き

~今年から始まった企業環境情報公開制度 多くの日系企業も対象に~ 


1
.『企業・事業者環境情報公開弁法』の概要

 中国ではここ数年も新たな環境規制ができている。今回取り上げるのは「企業環境情報公開制度」である。対象企業リストには日系企業も多い。201511日施行の新『環境保護法』第12条でこの制度を規定しており、具体的には『企業・事業者環境情報公開弁法』で運用する。本弁法は、環境保護省が20141219日に公布し、201511日施行している。

 本弁法の適用対象は、重点汚染排出事業者及び非重点汚染排出事業者である。このうち重点汚染排出事業者とは、区設置市級政府の環境行政部門が毎年3月末までに定めた本行政区域内の重点汚染排出事業者リスト(以下、対象企業リストと称す)に入った企業のことである。2015年では3月末に企業リスト公開が間に合わなかったところが多く、4月頃に各市の環境保護局が一斉に公開された。

 重点汚染排出事業者の義務としては、対象企業リストを公布後90日以内に環境情報を公開し、環境情報は新たに発生または変更があった場合、30日以内にその情報を公開しなければならないとした。弁法規定では「3月末に対象企業リスト公開」となっているため、対象企業は6月末までに情報公開しなければならないことになる。

 重点汚染排出事業者が公開しなければならない環境情報は次の通り。  

 

①企業基本情報(事業者名称、組織機構コード、法定代表者、生産住所、電話、生産経営の主要内容、製品及び規模)

 

②汚染排出情報(主要汚染物及び特徴的汚染物の名称、排出方法、排出口数と分布状況、排出濃度と総量、基準超過状況、適用する汚染排出基準、査定された排出総量)

 

③汚染処理施設の建設・運行状況

 

④建設事業環境影響評価及びその他環境行政許可状況

 

⑤突発的環境事故緊急対応プラン

 

⑥その他公開しなければならない環境情報(別途規定する見込み)

 

⑦環境自社モニタリング方案

 

 環境情報公開の方法としては、自社ウェブサイト、地方環境当局が開設する環境情報公開プラットフォーム(ウェブページ)、現地報道メディアから一つ以上選ばなければならない。自社ウェブサイトで公開すれば問題ないが、地方環境当局ではプラットフォーム利用を推奨しているところが多い。そのほか、掲示板、テレビ・ラジオ、資料配布スタンド設置なども推奨している。

 非重点汚染排出事業者に対する規定としては、義務化してはいないが、国は非重点事業者が自主的に生態保護、汚染防止、社会環境的責任の履行に役立つ情報を公開するよう奨励している。

 懲罰規定としては、重点汚染排出事業者が下記の行為のうち1つに該当した場合、県級以上の環境行政部門により『環境保護法』の規定で公開を命じ、3万元以下の罰金を科し、企業名を公表するとした。地方環境当局は不定期で対象企業の環境情報公開状況を検査する。

 
 

①本弁法の内容規定の通りに環境情報を公開しない場合。

 

②本弁法で規定する方法で環境情報を公開しない場合。

 

③本弁法で規定する期限内に環境情報を公開しない場合。

 

④公開内容が真実でない、または虚偽である場合。

 


2.対象企業リストに日系企業が多数あり

 この対象企業リストは各市の環境保護局が、企業から出された環境アセス書類や届出書類などから把握している汚染負荷の大きい工場・汚染処理施設・病院等をリストアップしたものである。小規模の工場や、汚染負荷の大きい工程のない工場などは含まれていない。全ての市の環境保護局で対象企業リストがネット公表されているわけではない。これにはリスト策定が遅れている場合、リスト公表が遅れている場合が考えられる。公表された一部地方のリストを見ると、日系企業も含まれている。その一例として、下表に上海市、遼寧省大連市、広東省深圳市、広東省東莞市のリストのうち主な日系企業を挙げた(下表で全ての日系企業を網羅しているわけではない)。

表.上海市、遼寧省大連市、広東省深圳市、広東省東莞市の対象企業リストのうち主な日系企業

                                                                   
 

地域名

 
 

日系企業名

 
 

上海市

 
 

三井高科技(上海)有限公司

 
 

上海山崎路板有限公

 
 

日乃本五金塑料製品(上海)有限公司

 
 

上海NTN精密機電有限公司

 
 

金井特線工業(上海)有限公

 
 

 

 
 

遼寧省大連市

 
 

旭硝子特殊玻璃(大連)有限公司

 
 

 

 
 

広東省深圳市

 
 

オリンパス(深圳)有限公司

 
 

オムロン電子部件(深圳)有限公司

 
 

旭硝子精細玻璃(深圳)有限公司

 
 

深圳東洋旺和実業有限公司

 
 

エプソン精工(深圳)有限公司

 
 

住友電工電子製品(深圳)有限公司

 
 

深圳市日東設備工程有限公司

 
 

東レ塑料(深圳)有限公司

 
 

上村旭光化工機械(深圳)有限公司

 
 

富士電機(深圳)有限公司

 
 

精密回路技術(深圳)有限公司

 
 

山田精密技術(深圳)有限公司

 
 

昭工表面製品(深圳)有限公司

 
 

 

 
 

広東省東莞市

 
 

日立蓄電池(東莞)有限公司

 
 

日立化成工業(東莞)有限公司

 
 

田村化研(東莞)有限公司

 
 

京セラ愛克(東莞)有限公司

 
 

東京光学(東莞)科技有限公司

 
 

 

 

 

出典:

上海市リスト http://www.sepb.gov.cn/fa/cms/upload/uploadFiles/2015-04-22/file1973.pdf

大連市リスト http://www.epb.dl.gov.cn/Common/View.aspx?mid=480&id=20830&back=1

深圳市リスト http://www.sz.gov.cn/cn/xxgk/szgg/tzgg/201504/t20150421_2860674.htm

東莞市リスト http://www.dg.gov.cn/0216/6.1/201504/870048.htm


3
.対象企業の対応すべき内容


 中国に工場を持つ企業の対応としては、
①工場所在各市の環境保護局が4月前後に公表した対象企業リストに入っているかどうかを早急に確認する必要がある。対象企業リストに入る条件としては、規模の大きな工場、重点環境監視企業、省級実験室を備える企業、3年以内に大規模環境汚染事件を起こした企業などである。もし対象企業リストに入っていれば、本弁法で規定された情報公開内容に基づいて、6月末までに早急に社内の環境情報を整理し、自社ウェブページなどで公開する必要がある。

 この対象企業リストは毎年更新されるため、毎年確認する必要がある。
2015年版に入っていなかったからといって、2016年版も入らないとは限らない。

 地方によっては環境情報公開のフォームなどを用意しており、地方独自の通達内容がないかどうか併せて確認する必要がある。

※当社では『企業・事業者環境情報公開弁法』仮訳を販売している。詳細は以下
URL参照
http://www.jcesc.com/env_law_reg.html#LR0056

 

2015年5月11日 (月)

アジア最大規模の環境展――中国国際環境博覧会(IEexpo2015)が開催、併設フォーラムも

 5月6日~8日、上海中貿ミュンヘン展覧有限公司、環境保護省固形廃棄物・化学品管理センター等は、上海新国際博覧センターにてアジア最大級の環境技術展示会である中国国際環境博覧会(IEexpo2015)を開催した。第16回目となる今回は、前回より200社(25%)増えて過去最多約1100社の環境・省エネ・リサイクル分野の企業・事業団体・研究機関・メディア等が出展しており、そのうち日系企業は三菱総合材料やバンドー化学(上海)など過去最多の36社、さらに日本企業との提携を明確にしている企業は約10社であった。出展面積は6万平米であった。
 今回の特徴としては、水分野・大気分野・廃棄物分野・土壌分野で増えていたが、特に最近の情勢を反映して土壌浄化分野の拡大が顕著であった。また空気清浄機エリア(空気清浄機業界連盟の後援)、第三者汚染処理成果エリア、環境モニタリングエリア、環境イノベーションエリアが新たに設けられた。中国環境企業の大面積出展が増えたことも特徴であり、中国環境企業の大幅な成長が示された。
 海外からの出展では、26の外国と地域から出展しており、中でも台湾、フランス、ドイツ、日本、韓国、米国からはパビリオンを組み出展数が多かった。後援団体のうち日本関係ではジェトロと当社であった。
 展示会期間中、約20の環境シンポジウム・フォーラムが開催された。そのうち筆者が参加したのは以下の通り。
・第13次五ヵ年計画期間下の環境産業の趨勢とイノベーション
・第1回中国環境モニタリング技術・情報化シンポジウム
・環境科学技術国際シンポジウム
・日中汚染土壌・地下水修復技術フォーラム(ジェトロ等主催)
・日中VOC測定処理技術シンポジウム(ジェトロ等主催)
・中国飲料水安全性 微汚染水源の膜法高度処理技術フォーラム
・第2回新情勢下での汚泥処理処分・資源化循環利用技術フォーラム
・国際海水淡水化・膜技術フォーラム
・第2回重点産業VOC汚染処理・モニタリング技術交流シンポジウム
・第2回中国民間空気清浄機産業サミットフォーラム

 また日本のメディアでの報道が相次いでおり、以下のような報道がなされた(一部報道では出展日系企業数が少なくなっているが、最終的な出展数は上記の通り)。
・日本企業、汚染対策技術アピール 中国環境博覧会が開幕
http://www.47news.jp/CN/201505/CN2015050601001194.html
・上海で大規模な環境ビジネスの展示会
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150506/k10010071341000.html
・汚染対策の技術アピール 日本企業、中国の展示会で
http://www.sankei.com/photo/daily/news/150506/dly1505060025-n1.html
・日本の大気汚染防止技術をPR:上海で環境展、政策が追い風
http://news.nna.jp.edgesuite.net/free/news/20150508cny001A_lead.html
・中国最大規模・環境ビジネス展・環境汚染対策の製品・技術を紹介
http://e.jcc.jp/news/9562037/
・日系企業 中国環境市場に相次ぎ参入
http://www.kagakukogyonippo.com/headline/2015/05/08-20108.html
・日本の20社、技術アピール 上海で中国環境博覧会
http://www.sankeibiz.jp/business/news/150508/bsc1505080500003-n1.htm

 当社は、2008年より中国環境博覧会の日本出展窓口機関となっており、今回も当社経由の出展企業には同価格で様々な特典(無料広告、出展手引き和訳等)を提供してきた。次回は2016年5月5日~7日にて開催することが決定している。

※2015年出展日系企業・提携企業一覧は当社ウェブサイトに掲載予定
※2016年中国環境博覧会の出展受付のご相談は当社まで

写真:当社が配布した日本パビリオン紹介チラシ

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写真:日本パビリオンの様子
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写真:IEエキスポの様子
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写真:中国飲料水安全性 微汚染水源の膜法高度処理技術フォーラムの様子
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写真:第1回中国環境モニタリング技術・情報化シンポジウムの様子Qq20150511225233

2015年4月 1日 (水)

日中環境協力支援センター創立10周年のご挨拶

 時下ますますご隆昌のこととお慶び申し上げます。
 平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
 さて、当社は本年4月1日をもちまして創立10周年を迎えました。これもひとえに皆様のご支援、ご愛顧の賜物と心から感謝いたしております。

 当社は2005年、中国環境ビジネス支援、日系工場中国環境管理支援、中国環境・エネルギー分野の官公庁事業を3本柱として、当初は大阪に設立し、その後2007年に東京目黒に移転しました。中国拠点としては、2006年に駐在員事務所を開設し、その後2009年に現地法人「北京大野木環境コンサルティング有限公司」を設立いたしました。
 この10年、上記3本柱で多くの事業を手掛けてまいりました。この間、中国環境・省エネビジネスのコンサル会社も多く出てきましたが、例えば別業界の方が日系企業で中国環境・省エネアライアンスを組織しながらもいつの間にか撤退されていたり(事業が困難で元の業界に戻られたようです)、また北京のある大学が日系企業向け環境ビジネス事業をしても成果が挙がらなかったり、ある日系向け中国環境ビジネスコンサル会社では裁判沙汰になったりしており、また日中関係の影響もあり、容易な事業ではありませんでした。そんな中でも当社は、高い専門性、豊富な人脈、環境改善に対する情熱、地道・堅実で人任せにしない方針、お客様の立場に立った適切な提案、愛国精神を土台として、中国環境・省エネ事業だけを10年間一貫して続けてまいりました。

 「中国の環境問題の解決は、他の途上国の環境問題解決のヒントになる」という信念で続けておりますが、中国環境問題の解決はビジネスだけではできず、環境政策や環境教育、経済・エネルギーセクターの環境重視も極めて重要です。今後は、上記3本柱に加えて、環境政策や環境教育などの事業にも取り組んでいきたいと考えております。

 これを機に社員一同決意を新たに、いま一度創業の精神に立ちかえり、一層の努力をして皆様のご愛顧にお応えしていく所存でございます。
 今後とも、なにとぞご支援ご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。 

 敬 白

平成27年 4月吉日

日中環境協力支援センター有限会社
取締役 大野木昇司

2015年3月18日 (水)

中国環境大臣の交代 ~国際派環境学者の就任で公平な環境規制を強化へ~

はじめに
 1月28日、中国共産党中央組織部は環境保護省党組書記を清華大学学長の陳吉寧氏に交代させることを決定し、2月27日に陳氏の環境大臣への人事が決まった。
 この人事については、国務院各省庁大臣の中で51歳と最も若いこと、そして環境分野の専門家、名門清華大学の学長からの人事など、話題も多い。
 この陳大臣には、筆者も会ったことがあり、中国語『月刊日中低炭素環境合作メールマガジン』(http://www.jcesc.com/cn/melma.html)を送信している。筆者は、陳氏が清華大学の下の方の副学長(副学長は2014年末現在で7名)になったときから注目していたが、その後、筆頭副学長、学長と順調に昇進しており、今回環境大臣になったが、中国の有力大学(北京大学・清華大学)学長は副大臣級の扱いとされており、ワンランクアップ昇進というわけである。また学者が大臣になった例には、現科学技術大臣の万鋼氏(元同済大学学長)がある。

1.環境保護省で士気を高めた
 陳氏の経歴は、1964年生まれ、吉林省出身、清華大学土木環境学部で理学学士、理学修士を取得、渡英し、ロンドンのインペリアル・カレッジの環境専攻で理学博士号を取得、そのままポスドク、助手を務め、1998年に帰国して清華大学環境科学・工学部の准教授に、1999年には学部長、教授に、2006年には清華大学副学長に就任、2012年に学長に就任した。専門分野は環境システムや環境計画・環境政策、水環境保護であり、国の環境分野の研究事業に多く関わり、国家環境諮問委員会委員や中国環境科学学会副理事長も務める。
 経歴でもわかるように、陳大臣の環境分野の専門性、研究経験、知見は非常に高く、まさしく適材適所であると言える。
 前任の周生賢氏は、環境分野を専門としておらず、典型的な政治家タイプであり、政治的有力者とのつきあいや組織運営には長けていたと思われる。しかし環境保護省の官僚から書類が上がってきても、省内幹部は「1を知って頂くために10を説明する」必要があったのではないかと推測される。この点、陳氏は環境の専門であり、国家環境諮問委員や環境計画立案に関わっていた経緯もあることから、「1を聞いて10を知る」であり、省内や環境意識の高い官僚からは歓迎され絶大な支持を集めており、士気は高まっている。高い専門性を武器に、新たな風を環境保護省に吹き入れてくれると期待が高まる。
 前任の周生賢氏は2005年より国務院環境行政部門のトップとなり、今年でちょうど10年になった。しかしこの10年で環境が大きく改善されたとはいい難く、国民の実感としてはむしろ悪化したとさえいえる。しかも環境分野の汚職も増え、例えば環境アセスの認可を得ずに勝手に建設着工する、汚染問題を引き金とした住民運動が増えるなど、いい仕事をしたという印象はない。2013年の全人代での形式的な信任投票では、周生賢大臣の留任人事について、賛成2734票、反対171票(約7%)、棄権47票となり、反対・棄権票が極めて多い異例のことであった。例えば、王毅外務大臣への反対票は17票であった。ただ、個人に対する批判というよりは、大気汚染、地下水汚染などに対する環境行政への批判だとの指摘もある(東京財団 胡錦濤国家主席と温家宝総理の最後の全人代 <後編>:http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1129)。それでも環境行政のトップとして責任は重いであろう。

2.環境汚職に縁のない「国際派」
 弱小省庁であり、かつ自前の大産業を持たない環境保護省は従来、汚職とはあまり縁がなかったが、取締りの強化や環境アセス権限(この認可が下りないと建設着工できない)により、汚職の温床が形成され、実際に汚職摘発も増えていた。汚職問題では、江沢民氏(特に妹の江澤慧氏)、令計画氏、周永康氏とのつながりや環境アセス認可でのグレーな手続きなどが一部メディアで取り上げられている。現中国政府が汚職追及を強化している中、陳氏のような既得権益がなくクリーンな人材が必要であったという状況もある。
 英国留学経験があり、海外の視点から見られる強みがある。記者会見でも国際協力を強化すると発言しており、「国際派」であると言える(新華社日本語 環境保護分野における国際協力をさらに深める 陳吉寧環境保護部長:http://jp.xinhuanet.com/2015-03/08/c_134047870.htm)。日本との関係でいえば、清華大学学長時代に、住友商事や東芝の会長と面会したほか、鳩山由紀夫元総理の清華大学客員教授就任式で証書を直接手渡したことが公開されているほか、清華大学環境学院には日本帰国組の学者が何人も在籍し、日本との共同研究プロジェクトも100件以上と多いことから、日本に対する理解は一定程度あるものと思われる。

3.困難な陳氏を取り巻く状況
 しかし陳大臣を取り巻く状況は必ずしも楽観視できない。
 陳氏は、環境分野の知見に優れ、省内から支持されているといっても、政治経験・行政経験がなく、その環境行政手腕は未知数である。そもそも環境行政は、単独で実行できるわけではなく、いくら環境保護省内で結束を高めても、特に強い権限を持つ経済官庁、環境汚染を招きやすいエネルギー開発分野の官庁、経済優先志向の強い一部地方政府など、他の行政セクターとどのように渡り合っていくかが大きな課題である。また政治的な立ち振る舞いにまだ習熟していないようであり、元CCTVニュースキャスター柴静氏の大気汚染告発ドキュメンタリー動画「天空の下で」公開直後に感謝のメッセージを送ったと公開の場で述べたが、その後この動画は閲覧不能となり、一抹の不安が残った。国務院の一大臣として軽率のそしりを免れないであろう。最年少、就任直後ということで今回は大目に見られると思うが、本来なら中国共産党中央宣伝部(以下、中央宣伝部)など然るべき組織に事前におうかがいを立てておくべきであった。
 陳氏に政治的基盤はなく、陳大臣を誰が登用したかが重要である。筆者には陳氏の後ろ盾に関する情報はないが、順当に考えれば、環境担当を兼ねる国務院副総理である張高麗氏(石油閥)、国務院トップである李克強総理(専門家活用を重視する共青団出身)、政府・党のトップである習近平国家主席・党総書記(清華大学卒)のいずれかであろう。
 前任の周生賢氏は環境改善で期待ほどの成果を挙げなかったことで批判があったが、それでも後ろ盾があったがゆえに長らく大臣を続けられた。しかし陳氏がもし経済セクターや地方政府の反対に遭って環境対策を思い通り進められず環境改善の成果も挙げられなければ、解任もされやすいであろう。環境汚染状況は陳氏の指摘の通り「史上最悪」であるが、環境改善を多くの国民に実感できるようにしなければならず、その任務は重大である。
 環境行政における清華閥の影響力が一層高まるが、清華環境閥は環境技術・環境工学・環境産業政策に強いが、他の分野は必ずしも強くない。例えば、環境法なら北京大学・武漢大学、環境経済なら北京大学・人民大学、環境科学なら北京大学が強く、また生物多様性事業では清華は強くない。清華閥に限定せず適材適所での任用ができるかどうかも注目に値する。

4.大気汚染告発動画の閉鎖の背景
 前述の大気汚染告発動画の内容、影響、そしてその閉鎖については、既に多くのメディアが報道、分析しており、ここでは繰り返さないが、陳氏は「レイチェル・カーソン」をほうふつとさせると指摘、筆者は日本の公害時代に、弁護士・学者・医者・メディア関係者などが手弁当で公害問題に立ち上がったことを想起した。
 動画閉鎖の原因は、批判一辺倒ではないものの政府批判を内包する敏感な内容であったこと、全人代開催直前であったこと、政府の許可なしに制作したことなどであろう。報道によると、中央宣伝部が3月3日に禁止令を出したとのことであるが、それも社会的安定を最優先するこれまでの中国のやり方を見ていれば十分に予測できたことである。中国では世論調査とその結果も国家機密扱いされており、世論に働きかけるこのようなドキュメンタリー動画方式は、中央宣伝部の許可を仰がないと政治的リスクがつきまとう。例えば、環境保護省や中央宣伝部等は2011年5月25日『全国環境宣伝教育行動綱要』を公布したが(新華社中国語 環保部、中宣部等発布『全国環境宣伝教育行動綱要』:http://news.xinhuanet.com/fortune/2011-05/25/c_121458198.htm)、この時は中央宣伝部、中国共産党中央精神文明建設指導委員会弁公室、教育省、環境保護省、共産党青年団中央、全国婦女連合会などの組織が主導した。ただし柴氏にとって、安全策を取ってこのような組織の協力を仰げば、告発の内容が骨抜きにされてしまうというジレンマがあり、苦悩の末のギリギリの選択だったのだろうと推測される。
 ただし公害被害の告発について、中国政府は必ずしも消極的ともいえない。環境改善は汚職撲滅と共に国民からの支持を得る分野になっており、中央政府は公害被害の告発を陰に陽に支え、特に環境改善に後ろ向きな経済セクターや地方政府を叩く口実としてきた。しかしこれもルールと程度があり、住民運動を起こさないなど社会的安定最優先の原則から外れてはならない。

5.日系企業への影響
 陳氏就任の今後の影響については、直ちに実務面で直接的な対応が必要になるわけではないが、環境政策の整備や環境規制の強化、環境取締りの強化が一層進むと思われる。環境保護法の改定でより厳しくなり、それが下位法令・地方法令へ浸透しつつある現状と相まって、環境行政部門の士気が高まり、公平で的確な対策を講じられるようになって、徐々に環境対策の効果がより高まると予想される。
 このような背景のもと、現地の日系工場にとっては、環境コンプライアンスの一層の重視が求められる。これは経営にとってはプレッシャーになるが、環境対策を熱心に行ってこなかった地場企業にとってより大きなプレッシャーがかかることになり、相対的には日系企業には有利に働く。
 一方、環境産業にとっては大きなビジネスチャンスになる。国際派の新大臣のもと、中国の環境行政部門や環境産業は、日本との環境協力により積極的になるものと思われる。

2015年2月 9日 (月)

中国環境保護法への対応 ~より重要な下位法令・地方法令への対応~

はじめに

 中国初の『環境保護法』は19891216日に公布された。環境対策の深化や、経済情勢、環境汚染をめぐる情勢の変化を受けて、25年を経て2014424日に全面改定され、201511日より施行された。今回の改定は大幅なものとなり、中国で工場を持つ日系企業や、中国環境市場に関心を持つ日系企業が関心を持つこととなった。

 本法改定に関して、他に解説記事が見られるが、事実誤認や不正確な記述、実務性なし、現地企業目線でない解説も多い。本稿では中国で工場を持つ日系企業向けに実務面から見た対応の注意点をまとめる。

 

1.基本法であり、直接的な対応は不要

 本法の改定に当たって、日系企業からどんな対応が必要かとの質問を受けることが多いが、本法に限定すれば、「すぐには何の対応も必要ない」のが答えである。

 なぜなら本法は二重の意味で原則的なものであり、条文に具体性がないからである。第一に、本法は基本法的な位置づけであり、今後の様々な法令・政策・標準を制定する法的根拠になるのであり、その規定は原則・方向性・方針的な内容に留まる。例えば、日数罰金制度や罰金の上限撤廃に関する規定はあるが、その具体的な罰金額については本法に規定がない。罰金額は、個別法である水汚染防止法、大気汚染防止法などで規定されている。第二に、日本とは異なり、中国法制度の中でそもそも「法律」とは原則的な内容に留まり、具体的規定は少ない。具体的規定は、下位法令である行政法規、部門規章、標準、地方法規、地方政府規章、地方標準などで定められている。

 本法には、罰則強化や環境公益訴訟等の原則的規定はあるが、具体的規定はないため、対応したくともどう対応すればわからない、対応しようがないのが実情である。

 また本法の施行日は201511日であり、全ての条文がすでに発効しているわけであるが、実質的に機能していない部分も多い。本法には54もの付随政策(具体的規定を盛り込んだ下位法令)を策定する予定になっているが、1月末時点でまだ約10件(詳細は後述)しか制定されていない。つまり本法の多くの条文は施行日を超えた現在も実質的に機能していない。

 

2.中国と日本の法概念の違いと実務面への影響

 中国環境コンプライアンスにあたっては、中国の法概念に対する理解が必要となる。中国の法体系は全国(中央)では「憲法→基本法→法律→行政法規→部門規章→標準」、地方では「(全国版→)地方法規→地方政府規章(→地方標準)」となっている。下位法令は、上位法令の趣旨に反しない範囲で、上位法令を補足するために制定できる。地方法令は、全国(中央)や地方上位法令の趣旨に反しない範囲で、上位法令を補足するために制定できる(一般に、地方法令は中央法令より厳しくなければならない)。

 日本では法律のレベルで詳しい規定があるため、日本人はどうしても話題となった法律にばかり注目する傾向があるが、実務面から言えば、原則・方向性・方針だけを定めた法律だけを見ていても環境コンプライアンス対応はできず、むしろ詳細や具体的内容を規定した下位法令や中央より厳格な地方法令への対応の方が重要である。この他にも、行政通達(公告)、計画、実施意見、実施方案なども出されるが、内容によっては順守が義務付けられる場合もある。

 

3.本法の原則・方向性・方針

 全ての条文が直ちに発効するとは限らないものの、本法の原則・方向性・方針については、今までの環境政策と比べ、以下のような特徴がある。

 

特徴①日数罰金制度と罰金上限の撤廃

 第59条:環境汚染行為のある企業に罰金処分を科し、改善命令を受けても改善しない場合、行政機関は改善命令を下した日の翌日より、元の罰金額に基づいて日数連続で罰金を科すことができ、且つ汚染防止設備の運用コストと、違法行為が招く直接の損失等の要素に基づいて執行すると規定した。また地方法規では、日数連続罰金対象の違法行為の種類を追加可能とした。

 中国の環境関連の法律に定められた罰金額は低額であり、上限があった。新法では罰金額に上限がなくなる。このため、速やかに改善を行わなければ高額の罰金を科されるリスクあり。金額規定はない(個別法令で対応)

 

特徴②違法な汚染排出で、生産停止・拘留・刑事処罰

 企業/生産事業者が、汚染濃度規制や重点汚染総量規制を超過した場合、県級以上の政府環境行政部門が、生産制限、生産停止改善等の措置を命じることができる(第60条)。

 第63/69条:企業に以下の事由がある場合、企業そのものを処罰するだけでなく、企業の直接責任を負う主管人員と他の直接責任者を処分するほか、状況により15日以下の拘留処分とし、犯罪容疑のある場合に刑事責任を追及する。

・法規定に違反し、汚染排出許可証を取得せず汚染排出し、汚染排出停止命令も拒否した場合。

・地下パイプ、排水ホール、排水溝を通じて汚染を流すか、検査データを改ざん・偽造するか、汚染処理設備を正常に使用しない等、監督管理を逃れる方法により違法に汚染排出した場合。

 

特徴③情報公開と市民参加を強化

 国民、事業者等が、環境情報を取得し、環境保護への関与と監督をする権利を規定した。各級政府環境行政部門は環境情報を公開するとし(第53条)、これに基づき、環境状況の定期的公表(第54条第1項)、違反者名簿公表(ブラックリスト制度、同条第2項)等を行う。また重点企業が環境情報公開するよう義務付けており、重点企業リストに入れば早急な対応が必要となる。

 

特徴④環境公益訴訟を認める

 自身に直接的被害のない「環境汚染、生態破壊、社会の公共利益に損害をもたらす行為」に対して、①「法に従い市級以上の政府民政部門に登記している」、②「連続5年以上、環境公益活動を専門的に行い且つ違法記録がない」社会組織は、人民法院に提訴できる(第58条)。環境分野の非政府組織(NGO)など300団体以上が環境公益訴訟を起こす資格を持つ見通しである。

 

特徴⑤周辺法令で一部導入済み制度を改めて規定

 近年、周辺法令や地方法令で一部導入されていた汚染排出費、汚染排出許可証制度、汚染排出総量規制、汚染源モニタリング、環境影響評価、環境信用制度、環境汚染通報制度などの制度について、最上位法となる今回の本法であらためて規定した。上位法で明記されていない場合、下位法令で規定しても法的根拠が弱いとして、他省庁の積極的協力が得られないなど、十分に執行されないケースがあった。今後制定・改定される法令、地方法令などで具体化される見通しである。

 

4.今後策定される54件の付随政策と公布済み規定

 中国環境保護省によると、新本法に合わせて54件の付随政策を制定する予定となっている。もっともこの「54件」という数は、201518日に環境保護省環境監察局の曹立平副局長が述べており、この時点で9件完成、13件が近く完成、26件が鋭意推進中と指摘している。2014619日に環境保護省政策法規司の別涛副司長が語った「30件」からすると倍増しており、今後も増えるかもしれない。この付随措置の全体像や一覧などは公表されておらず、どの法規・制度・措置が本法の付随規定であるかが分かりにくくなっている。

 日本の習慣からすれば、新本法の施行日(201511日)に合せて全ての付随規定を制定すると思われるかもしれないが、実際には施行日を過ぎても付随政策等が策定されずに、当該の条文が実質的に発効しないケースも多い。危険化学品環境管理登記制度がその典型例であり、201331日施行となっているが、危険化学品リストの未策定、料金基準未策定、地方環境当局の研修が遅れていることなどから20151月末時点でまだ機能していない。

 20151月末時点で、この54規定のうち、下表の通り10件がすでに公布、施行されている。現在のところ、環境違法行為取締り分野の付随規定を優先しているようである。これらについては回を改めて解説する予定である。

 

表.中国本法の付随法規・制度(20151月末現在)

                                                                                                                                   
 

 
 

法規名

 
 

公布機関

 
 

環境保護法対応条文

 
 

公布日

 
 

施行日

 
 

1

 
 

環境当局日数連続罰則弁法

 
 

環境保護省

 
 

59

 
 

141215

 
 

1511

 
 

2

 
 

環境当局封鎖・差押え弁法

 
 

環境保護省

 
 

25

 
 

141215

 
 

1511

 
 

3

 
 

環境当局生産制限・生産停止改善弁法

 
 

環境保護省

 
 

60

 
 

141215

 
 

1511

 
 

4

 
 

企業・公共機関環境情報公開弁法

 
 

環境保護省

 
 

53566365

 
 

141215

 
 

1511

 
 

5

 
 

突発的環境事件調査処理弁法

 
 

環境保護省

 
 

47

 
 

141215

 
 

1531

 
 

6

 
 

企業グリーン調達指針(試行)

 
 

環境保護省、商務省、工業・情報化省

 
 

2122

 
 

141222

 
 

1511

 
 

7

 
 

行政当局送検時に適用する環境違法案件行政拘留暫定弁法

 
 

環境保護省、公安省、工業・情報化省等

 
 

6163

 
 

141224

 
 

1511

 
 

8

 
 

環境民事公益訴訟制度実行通達

 
 

環境保護省、最高人民法院、民政省

 
 

58

 
 

141228

 
 

(141228)

 
 

9

 
 

企業・公共機関突発的環境事件緊急対応プラン届出管理弁法(試行)

 
 

環境保護省

 
 

47

 
 

1519

 
 

1519

 
 

10

 
 

環境監察査察弁法

 
 

環境保護省

 
 

245767

 
 

14812

 
 

14812

 

(出典:中国環境保護省ウェブサイト等の情報を筆者が翻訳、整理)

 

5.実務者が今後留意すべき点

 新たな本法で盛り込まれた原則・方向性・方針について、今後は下位法令、標準、地方法令(地方標準)などで具体化されてくる。中国進出日系企業の実務担当者は、原則・方向性・方針に留まる本法のみならず、これらの下位法令、標準、地方法令(地方標準)の策定状況などの情報をしっかりフォローし、対応しておく必要がある。

 現在、付随政策の策定では環境取締り分野を優先しており、法令違反時の罰則が強化され、経営上のリスクとなっており、各社で環境法令順守状況を早急に再確認すべきである。

 

※当社情報サービスでは、これらの下位法令・標準・地方法令(地方標準)の策定状況を適時お知らせしています。本サービスでは、タイムラグが小さく、情報漏れが少ないことを特徴としています。

参照URL http://www.jcesc.com/enw.html

«激動する中国環境規制と対応が迫られる中国進出日系企業

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